ハラル食、日本人も堪能 食材店・料理教室が人気
日本人の間でムスリム(イスラム教徒)向けの「ハラル」対応の食事を楽しむ消費者が増えている。東京・新大久保周辺にあるイスラム教徒らが運営する食料品店を訪れる日本人が目立つほか、外国人客を主要顧客に設定したハラル対応のカフェにも日本人の姿が増えている。教義ではなく、新しい食事の選択肢としてハラルを楽しんでいるようだ。
14日夕、JR新大久保駅(東京・新宿)にほど近いハラル対応の食料専門店「グリーンナスコ」。店内には香辛料や米など数百品目以上のハラル対応食品がずらりと並ぶ。夕食などに使う食材を求めるイスラム教徒に混じって、日本人の姿も目立つ。
友人と訪れていた神奈川県厚木市の女性会社員(32)は「アジアのバニラ」とも呼ばれ香りに特徴がある「パンダンリーフ」(150円程度)を購入。「マレーシア料理にはまり、ハラル対応の食材を買いによく新大久保に来る。アレルギーの心配も少ないため、友人らに振る舞う時にはハラル食材を使った料理を積極的に作るようにしている」と話していた。
同店を運営するナスコグループ(東京・新宿)の担当者によると、「来店客のうち日本人の割合は1~2割程度で、年々増えている」という。
かつて韓流の街として注目を集めた新大久保周辺だが、今ではグリーンナスコを含めハラル対応食品を取り扱う5店舗程度が軒を連ねる「イスラム横丁」の様相を呈する。1日に5回ある祈祷(きとう)の時間になると店を閉めるなど異国情緒を味わうこともできる点も好評で、訪れる日本人もじわりと増えている。
新大久保だけではなく、日本のスーパーの店頭でもハラル食材の存在感は増している。一般の消費者も利用できる業務用スーパー「Aープライス」を運営するトーホーでは、イスラム教徒向けにハラル対応の食材約50品目を用意。2014年のハラル関連の売上高は前年比15%増と好調に推移しており、「従来はイスラム教徒向けの商品だが、通常の食材として活用する日本人の購入者も目立つ」(同社)という。
実際、ハラル料理をテーマにした料理教室も人気を集めている。17日午後、東京都港区の中東料理店「ルマグレブ シャンデリア」で開かれたハラル料理教室には、若い女性客ら7人が参加し、パプリカを利用したクスクスなどを熱心に作っていた。同料理教室は参加費5500円で約3時間をかけて、ハラル料理を学ぶ内容。毎月1~3回ほどの開催だが、「ハラル料理は一度参加すると継続的に学ぶようになる参加者が多い」(同店)という。
イスラム教徒の訪日客が増加する中、ハラルを楽しめる外食店が増えており、日本人にとっても気軽にハラルに対応した料理を楽しめる環境が整ってきていることも人気を後押しする。
東京・浅草に昨年11月に開業したカフェ「セカイカフェ」では、ハラルに加えて「グリル野菜のピザ」(1000円)や「旬野菜のグリルとラムステーキ」(1200円)など10~15品目を提供。店内ではハラルやベジタリアンなどアレルギーや宗教上の理由で食べられない消費者にわかりやすいようにピクトグラムと呼ばれる絵文字でメニューを表示している。
この日、「旬野菜のグリルとラムステーキ」を食べていた東京都墨田区の加藤京子さんは「健康にも良いというイメージがある」。さいたま市の高橋敏也さん(56)は「ハラル食材は添加物の心配も少なく、安心して食べることができる。宗教食としてではなく、通常の料理として楽しんでいる」と笑顔で話していた。
同店を運営する日本SI研究所の芝山則敬さんは「店舗の利用者のうち約半数を日本人が占める。想像よりも日本人の利用が多く、日常的にカフェとして利用する人も目立つ」と話す。
フードアナリストの上村尚美さんは「ハラル食材は安心や安全といった意識が徹底されているほか、動物ならどんな餌を食べて育ったかというトレーサビリティーも確立されている」と話す。訪日客の増加を受けて、ハラル食品を取り扱う小売店や外食店は今後もますます増える見通し。健康意識が高まるなか、ハラルは日本人にとっても身近なものになりそうだ。(篠原英樹)
[日経MJ2015年2月23日掲載]
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