バレンタイン、今年のイチオシは「ブロンド」
バレンタイン商戦が始まった。今年注目が集まるのが、ブラック、ミルク、ホワイトに次ぐ「第4のショコラ」と呼ばれる「ブロンド」チョコレート。輝く黄金色と、チョコなのにビスケットのような味わいが特徴だ。また、これまでブラックやミルクの陰に隠れていた第3の「ホワイト」も急浮上。バレンタインながら、女性の好きなコクのある、あま~いタイプに熱い視線が注がれている。
「こんなチョコあるんですね、知らなかった」
伊勢丹新宿本店(東京・新宿)が毎年1月下旬に開催する「サロン・デュ・ショコラ」。約100ブランドが集まる会場で、ブロンド色のチョコでコーティングしたアーモンドなどの詰め合わせ(3240円)を見ていた都内在住の遠矢香織さん(42)は驚いた。
一方、食べたことがあるという30代の女性は「甘くてキャラメルっぽい味がおいしい」とその魅力を話す。
このブロンドチョコレートは、チョコの製造販売の仏ヴァローナが生み出した。同社のシェフがホワイトチョコを製作中、誤って焦がしてしまったのがきっかけ。
そのとき偶然できた"焦げたチョコ"の色や風味にひかれ、約7年をかけて製品化にこぎつけた。特徴は黄金色にビスケットのような味わいだが、もちろん色素や風味は加えていない、れっきとしたチョコだ。
「ブラック、ミルク、ホワイトに次ぐ、新たなカテゴリーとして打ち出されたのは画期的」と、伊勢丹新宿本店の洋菓子担当の川口輝彦バイヤーは話す。国内では13年に発売。「14年は前年の1.5~2倍を売り上げた」(ヴァローナジャポン)といい、認知度は徐々に高まっている。
「今までにない素材を用いることで、驚きを提供したい」(森下由佳子バイヤー)と、高島屋でも登場。新宿店(東京・渋谷)などで、ブロンドチョコを使ったバラの花の形のチョコ(3456円)を同社限定の商品として販売する。
ケーキでも味わえる。東京・赤坂の「パティスリー&カフェ デリーモ」。同店の一番人気というケーキ「デリーモ」(630円)は、ケーキ表面の飾り、艶のあるコーティング、中のムースまで、ブロンドチョコをふんだんに用いる。シェフパティシエの江口和明さんは「チョコと気づかない人も多いです」。
もう一つ、今年のバレンタインで見逃せないのが、第3のチョコ「ホワイト」の復活だ。
チョコレートの主な原料はカカオ豆をすりつぶした「カカオマス」とカカオ豆に含まれる脂肪分の「カカオバター」。ホワイトチョコはカカオバターのみを用いており、カカオの香りを重視する欧米の伝統的なショコラティエを中心に「かつてはホワイトは『チョコと認めない』というシェフも多かった。それが最近、見直され始めた」(伊勢丹の川口バイヤー)。
例えば、仏老舗の「ベルナシオン」は果実やナッツをトッピングしたホワイトチョコのタブレットが大人気。ベルギーの「ピエール・マルコリーニ」もホワイトにフランボワーズやレモンで香り付けした詰め合わせを販売する。
173種類のチョコの予約販売をスタートしたフェリシモでは、現時点で売り上げベスト10のうち、4商品がホワイトチョコを使っている。「この数年の動きで、一昔前では考えられなかった」と同社の木野内美里バイヤーは話す。
スイーツジャーナリストの平岩理緒さんは「例えば『ミルキーはママの味』というように、ホワイトはもともと日本人の好きな味。バレンタインの巨大市場である日本を意識して、ホワイトを打ち出す欧米のパティシエも増えている」とみる。
また、ビター系のチョコと合わせると風味が負けてしまうフルーツは、ホワイトとの相性がいい。「特に女性が好きな組み合わせ。自分への『ご褒美買い』や女性同士で交換する『友チョコ』が増えていることも、ホワイト人気をけん引している」(平岩さん)
昨年は関東地方を中心に雪に見舞われ落ち込んだバレンタインだが、日本記念日協会によると、今年の市場規模は前年を2割近く上回る1250億円に回復する見込みだ。(井土聡子)
[日経MJ2015年1月26日掲載]
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