「予想外だから面白い」 レタスクラブ編集長の冒険心
KADOKAWA レタスクラブ編集長 松田紀子氏(下)
松田紀子 KADOKAWA「レタスクラブ」編集長
主婦向けの生活情報誌「レタスクラブ」を復活へ導いた、編集長の松田紀子氏。だが、会社から就任の話を持ちかけられたとき、一人のビジネスパーソンとしては必ずしも「順風満帆」な時期ではなかった。「恐れず変化に身を委ねることで、開けるキャリアもある」と振り返るその姿は、どこか新生レタスクラブのイメージとも重なるところがある。(前回の記事は「雑誌レタスクラブ躍進 『よそ者』編集長の共感力」)
突然の買収、一時は転職まで考える
2011年秋。松田氏が勤めていたメディアファクトリー(MF)は突然、角川グループホールディングス(現KADOKAWA)に買収されることになった。合併された13年当時、松田氏は「すべてが奪われたような挫折感」を味わっていたという。
リクルートの子会社だったMFは、小回りが利きやすく風通しのよい組織が松田氏の肌に合っていた。他社の資本が入ってくるとはいえ、編集現場の日常が劇的に変化するわけでもない。しかし、松田氏の中でMFの成長は「コミックエッセー分野での自分の成功と、完全に正比例で結びついていた」ものだった。
「メンバーの一員として、頑張ってつくり上げてきた会社だ、という意識が強かったんですね。カドカワが嫌だったということではなく、別の会社へ無理やり転職させられたような感覚が、当時の私には耐えられませんでした」
一時は転職を考えるまで思いつめ、「モヤモヤした気持ちを抱えていた」という松田氏。それでも16年、レタスクラブの編集長を打診されて引き受けたのは「予想していなかった進路」が開けたことに、冒険心をかき立てられたからだ。
「私は十数年、コミックエッセーの編集者だったわけで、そのキャリアからいえば雑誌の編集長にチャレンジする機会というのはあり得なかったはず。それが、カドカワの傘下に入ったことで、目の前に差し出された。乗っかった方が面白いはずだ、と心が動きました」
松田氏は、変化をいとわない。むしろ楽しんでいる。そのパワフルな明るさは、「売れない、売れない」と言われ続けて疲弊していたレタスクラブ編集部にも波及し、その雰囲気を一変させた。