外見が似て、実力もある同僚に張り合ってしまう
脚本家、中園ミホ
年齢に加え体格や服の趣味が似た同僚に何かと張り合ってしまいます。実力は彼女が上なのに、どうしても「私の方が上よ」という態度になり自己嫌悪に陥ります。彼女の成績が上がることを心からよかったと思える自分になるにはどうしたらよいですか。(東京都・50代・女性)
うーん、私にも覚えがあるような……。要するに嫉妬ですね。嫉妬というと誰もが表では醜いものと嫌悪しますが、たいていの人が持つ自然な感情でもあります。ですから、まずはあまり自己嫌悪をされないことです。あなたの気持ちは自然です。
その上で、私はとてもあなたに好感を持ちました。相手の実力を心から認められるようになりたいと思うのは、簡単ではありませんから。
年齢だったり、見た目だったり、自分に似た部分がある人が同じ仕事をしていると、どうしても比べてしまうし、自分の方が優れていると思いたいもの。でも、相手が優れていることは多い。すると、人は嫉妬し相手をおとしめようとする。醜いのはそのありさまです。
例えば、相手の成果を受けとめつつ、やり方に難癖をつける。「慣例と違う」とか「ルール違反ではないか」などと、自分が正当という立場で人を批判する人を見かけたことがあるでしょう。もしかしたら、あなたもしているかもしれない。「嫉妬はいつも正義の服を着てやってくる」。タモリさんの言葉ですが、嫉妬の実像を見事に言い当てていると思います。
そして、ねたみは何一つプラスをもたらさない。優れた人のやり方を自分の仕事に生かせなくなるし、2人の対立が職場に亀裂を生じさせる恐れもある。
その意味で、自らの嫉妬に立ち向かおうとする相談者さんは賢明です。何としても負の感情を振り払いましょう。解決策は、実は簡単です。同僚に面と向かって「私、あなたに嫉妬しているのよ」とジェラシー宣言をしてしまえばよいのです。
私は以前から、自分にない能力を感じる脚本家仲間などには「あなたに嫉妬しています」と宣言することにしています。もちろん相手は驚きますが、腹の内をさらけ出せば仲良くなれるし、気持ちが楽になる。教えを受けられるし、競い合える。もう、おわかりでしょう。互いを認め、ライバルになれる。自分を高められるのです。
リオ五輪の競泳男子400メートル個人メドレーで金と銅のメダルを取った萩野公介選手と瀬戸大也選手はご存じでしょう。彼らは小学生時代から競い合ってきたライバルであり親友です。2人のさわやかな関係をテレビで目にしたときの気持ちよさ。相談者さんと同僚の方が2人のようになれば、必ず職場にもよい影響を与えるはずですよ。
嫉妬する相手に心を明かすのは勇気がいるかもしれません。でも、その勇気が同僚に挑む力にもなる。頑張ってください。
◇ ◇ ◇
[日経プラスワン2016年10月22日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。