いつも危険なことを想像する自分が怖い
女優・エッセイスト、ミムラ
いつも危険なことを想像してしまう自分が怖いです。赤信号で立ちどまったとき、止まらず歩いたらどうなるかとか、重い扉を開けたとき、誰かの指をはさんだらどうなるかとか、なぜか考えてしまいます。決してそれを望んでいるわけではありません。でも、自分にそんな衝動があるように感じ、不安です。(愛知県・30代・女性)
なるほど、これって怖いものみたさの一種かも、と思いました。このコラムの編集担当さんもビルの屋上で、そこから落ちる自分を想像してしまうそうです。だから高所恐怖症だとか。相談者さんは赤信号恐怖症とか扉恐怖症といえるかもしれません。でも、怖いもの見たさから本当に危ないことをしそうですか? そうではないでしょう。
むしろ、あなたは危機管理意識がしっかりしていると思います。危機管理では、どんな可能性が少ないことも実際に起きると想定し、対処策をとるのが鉄則。あなたは自然と危機を具体的にイメージしているのですから、あとはそれを防ぐよう行動するだけ。一種の才能ですね。
その才能を生かす方法もいろいろありそうです。私はあなたに「マネジャーをやってほしいなぁ」と思いました。私は常々マネジャーに最重要項目として「危機管理意識を持ってください」とお願いしています。芸能界に限らず、どの職種でも相談者さんのような思考の持ち主は重宝されるはずです。
もちろん居心地の悪さはある。「自分に危ないことをする衝動があるかも」という不安。今は小さくても不安が育つと危険な想像で家を出られなくなるようなことがなきにしもあらず。行き過ぎは止めたいですね。
おすすめは「そこはかとない不安は出し切る」ことです。何か不安があれば、その内容をどんどん文章に書き出していく。すると不安の正体がはっきりして落ち着くのです。私も何度か試し、効果を感じました。
難儀しているのは「危険な想像」ですから、楽しい一工夫もできそう。想像をホラーやサスペンスの物語にしてみませんか。まずは想像を断片的に書き連ね、より怖い(面白い)物語に脚色してみましょう。すると想像は創作になり、現実と心の中で切り分けられるはずです。
物語を家族や友人に読んでもらい、感想を聞けば物語をさらに客観的にとらえられるでしょう。ひょっとすると文才が開花して、ホラー作家になる道が見えてくるかも……
以前、作家さんと話をした時、ホラーやファンタジーが得意な方ほど、実はとても現実的な人なのだと感じたことがあります。それは役者も似たようなもので、悪役が上手な方ほど人格者で、現場では終始笑顔だったりします。ですので危ないことを考える=危ない人では決してありません。心配なさらず、あなたの危険な想像力でまわりの人を楽しませてください。
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[日経プラスワン2016年10月15日付]
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