昔パンスト、今ホーザリー 名称刷新おしゃれに変身
若い女性、コーディネート楽しむ
☆私たち「はいてます!」
「もう皮膚の一部。ナマ足を出していると、逆にすごいな、自信があるんだなと思っちゃう」と話すのは都内の会社員、高畠奈沙さん(21)。夏でもほぼ毎日ストッキングが手放せないという。
「脚がキレイに見える」と若い女性の間でストッキングが売れ続けている。そごう・西武では6月、ストッキングの売り上げが前年同月比4%増。「この1年半ほど、5%前後の伸びを維持している」。アツギも、2013年春夏向けのプレーンストッキング(1足500円以上)の売り上げが前年比2ケタ増だ。
「パンティーストッキングなんて絶対言いたくない」――。盛り上がるストッキング市場の進化は著しい。ひとつはその呼び名。やや古くさいイメージがある「ストッキング」を、透け感のあるタイツという意味の「シアータイツ」、靴下類の総称の英語を用いた「ホーザリー」や「レッグウエア」と呼ぶ人も出てきた。
はき方もこれまでの常識を覆す。従来、ストッキングははいていないように見える自然さが求められるアイテムだったが、今は「はいてます」と主張する姿が目立つ。特に人気を集めているのが、これまで脚が太く見えると敬遠されがちだった白っぽい色だ。
「肌より白い色を選べば、色白に見えるし、アザや傷も隠せる」。大学生の竹田美玖さん(22)、瑛里さん(20)姉妹は声をそろえる。「はいていることが分かって当たり前」という。実際、福助によると「量販店や専門店では白い色味の取り扱いや販売が増えている」。
もうひとつの人気はカラフルなカラーストッキング。福助では、今年に入り数量ベースで前年比約4割増のペースで売れている。会社員の藤田夕貴さん(25)は「はいていないと落ち着かない。仕事のときはベージュ、休日はカラーと気分を変えている」と話す。
合わせる靴もこれまでの定番のパンプスから一変。今街中で目立つのはスニーカーにストッキングと靴下の組み合わせだ。ショートパンツといったカジュアルな服装に、きちんとした印象を与えるストッキングを合わせる女性もいる。
☆機能も著しく進化
このギャップも「例えば、夏にニット帽をかぶるように、『外し』のおしゃれが得意な若い女性ならでは」と、ファッションジャーナリストの宮田理江さんは指摘する。
実は20代のストッキングに対する好みは50代と近い。アツギが20~60代に調査したところ「日常ストッキングをはく人」は平均66.8%。トップは20代前半(76%)で、2位が50代(72.5%)。透け感の好みなども20代と50代は似る。
ただ、着用動機は大きく異なる。「50代は下着と同様の身だしなみ意識から、20代は新しいファッションアイテムとして取り入れている」(宮田さん)。若い女性の間ではストッキングはもはやコーディネートの一部。竹田美玖さんも「安くて手軽に洋服に変化を付けられるアイテム」と話す。
ストッキングそのものの機能の進歩も著しい。引き締め効果のある着圧や、紫外線(UV)カット、涼感、消臭などだけでなく、さらに工夫された商品も。例えば、暑い夏にも着用する人が増えていることに対応し、おしりの部分をくりぬいてムレを解消したタイプなどが登場している。
機能別に11種類を展開しているアツギの「アスティーグ」では、今年5月以降、つま先部分がなく、サンダルなどでもペディキュアが見せられる「開」や5本指に分かれた「指」といった商品の人気が徐々に高まっている。インパクトのある見た目だが、ストッキングも、履きたい靴も「両方ともはきたい」という要望に応える。
ストッキングブームについて、ファッションジャーナリストの宮田さんは「かつて厚底靴を履いてスタイルをよく見せていたのと同じ。ストッキングを目新しく感じている若い世代が、ナマ足よりもキレイに見えることに気づき急速に浸透している」とみる。「特に若い世代では、ドール(人形)風に見えるファッションも支持されており、ストッキングがマッチした」とも。この夏も、ストッキングをはいた美脚で街を闊歩(かっぽ)する女性はまだまだ増えそうだ。
(井土聡子)
[日経MJ2013年7月15日付]
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