左右で「別人」半顔メーク 半分素顔、努力が一目で
ネットで写真公開し大反響
「軽い気持ちで写真を撮ったら、気持ち悪かった。すごい反響に自分でも驚いてます」。半顔メークの"震源地"となったのは、タレントでブロガーの桃さん(28)。4月、自身のブログで、顔の左半分だけ化粧した半顔メーク写真を公開、瞬く間にネット上で広まった。
インパクトがあるのは目だ。化粧を施した左目は、素顔のままの右目の7~8割増しの大きさに。「小学生の時に目が一重、と気付いて以来、研究を重ねてきた」というアイメークの技術はプロ並みだ。カラーコンタクトを入れて瞳を大きくし、つけまつげを4枚装着、目を二重にする効果があるアイテープを貼って、アイシャドーやアイラインを入れる。
「元がかわいかったら、半顔メークなんて面白くもなんともない」。タレント活動もしながら、あえて「面白い」舞台裏を公開したのは、女性たちに「努力すれば何とでもなる、とやる気と希望を持ってもらいたかった」から。実際、この日のブログには「勇気がわいた!」などのコメントが900件近く寄せられた。
桃さんに触発され、10代の女性たちも次々と半顔メークを公開し始めた。
サイバーエージェントが4月、女子中高生をターゲットとしたスマホ向けの簡易ブログ「Candy」で、半顔メーク写真を募集したところ、300枚を超える写真が寄せられた。
専門学校生の細渕瑞世さん(19)もその1人。これまでもCandy上で様々なメーク写真を公開し、ブログ読者に当たる「Fan」を1千人以上抱えている。半顔メーク写真も、顔の左右のギャップの大きさから「どうやったら、こんなにきれいにメークできるの?」と注目を集めた。
細渕さんは100円ショップやドラッグストアのコスメを駆使し、高価な化粧品は使わない。質問が多いメークの手法について、「大切なのは『やり方』ではなく、やる気。まずは自分でやってみて」と同世代の女性にエールを送る。
ビフォー&アフター…「Fan」1000人超、細渕さんの技を見よ
平たい顔はメーク映え
こうした半顔メークが流行する理由は何か。メーク理論や流行に詳しい資生堂ビューティートップスペシャリスト、西島悦さんは「女性たちが男性ではなく、『自分』に目を向けるようになった結果では」とみる。最初から完璧、ではなく、努力によって美しくなる過程と結果を公開することで、同世代から共感を得ることに価値を見いだす女性が増えているようだ。
同時に、女性の「変身願望」を満たし、表現できる点も大きい。結果が出るのに時間がかかるダイエットなどに比べ、化粧はすぐできるうえ「顔立ちが平たんなアジア系女性はメーク映えし、化粧による変身効果が大きい」(西島さん)。半顔メークは変身前後が一瞬で分かるだけに、手応えもつかみやすい。
「半顔メーク」前から、化粧の過程に加え、前後の顔のギャップを公開するコンテンツはネットや雑誌で人気、という下地もあった。
宝島社の10代向けファッション誌「CUTiE(キューティ)」では、一般読者がプロにメークしてもらう「神ワザ☆変身サロン」が人気企画だ。こちらは半顔ではないが、あまりの変身ぶりに「読者人気に加え(美容・雑誌)業界からも注目されている」(宝島社)。
「どこの化粧品使っているの」「化粧の手順を1から分かるよう、本にして」。半顔メーク写真にはこんなコメントが多く寄せられる。インパクトある半顔メーク女子には、マーケティングのヒントも多く眠っていそうだ。
(松本史)
[日経MJ2013年5月8日付]
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