誕生して900年 「かまぼこ」の名前の由来とは?
世の中にはいろいろな記念日がある。
「いい夫婦の日」などよく耳にするものだけでなくお菓子の日、さつまいもの日、そばの日などという食べ物がらみの記念日もあるが、先日ひょんなことから11月15日が「かまぼこの日」であることを知った。
「そんな記念日あったのか」と唸ってしまうほどに地味な記念日だが、知ってしまった以上そのまま放ってはおけず、どうしてこの日がかまぼこの日なのか調べてみることにした。
かまぼこが日本の歴史にはじめて登場したとされるのは、1115年(永久3年)のこと。
『類聚雑要抄』に、関白右大臣であった藤原忠実が、東三条殿に移転したときの祝膳にかまぼこを出したことが記されている。この1115年にちなんで11月15日が「かまぼこの日」に制定された。
かまぼことは魚のすりみを加工した練り製品の総称だが、多くの人が思い浮かべるのが平べったい板に練り物がくっついた、半月型の板かまぼこだろう。
漢字で書くと「蒲鉾」であることから分かるとおり、語源は川辺に生えている蒲(ガマ)の穂に形が似ていることからきている。
蒲の穂といえば、里山育ちの私は小さいころに「蒲の穂は蚊取り線香になる」と聞かされて、川までとりにいき、乾燥させて燃やしてみたりしたものだが、都会ではあまりみかけない。
まっすぐのびた茎に茶色いソーセージのような穂がつく植物のことで、竹輪にも似ている。
『類聚雑要抄』に描かれたかまぼこの図は、まさしく蒲の穂のような形のものだった。
室町時代の『宗五大草紙』によると、当時のかまぼこはナマズで作られていたそうだが、鮮度の良い魚ならどんな魚でもかまぼこの原料になる。
そのため全国には、地元でとれた旬の魚を使った多種多様なかまぼこ製品がある。
鳥取の「あごちくわ」、宮城の「笹かまぼこ」、愛媛の「じゃこ天」、鹿児島の「さつま揚げ」も、すべてかまぼこの仲間。京都にはそうめんのようになった「魚そうめん」もあるし、富山では縁起物をかたどった「細工かまぼこ」を結婚式の引き出物にする。
美人画を描く「刷り出しかまぼこ」など、絵柄を描くアートなかまぼこもある。
ところで、板付きのかまぼこを食べた後に残ったかまぼこ板、皆さんはどうしているだろうか?
ちょっともったいないから何かに使えないか、と考えたことのある方も多いだろうが、そんな方におすすめなのが板絵アートだ。
かまぼこの板に絵を書いたり、小物に仕立てたりして作り上げるのが板絵アートなのだが、なんとかまぼこ会社主催で、かまぼこ板絵国際コンクールなるものまで開催されている。
受賞作品を見ると、かまぼこだけでなく、板までも楽しんでしまおうという愉快な気持ちに心和まされる。
かまぼこの名前が古文書に登場したのが1115年なので、昨年、かまぼこは誕生900年を迎えた。かまぼこ業界は盛り上がっている。
皆さんも、新鮮な魚を使ったかまぼこ料理を記念に食べてみてはいかがだろうか?
(日本の旅ライター 吉野りり花)
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