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2021/6/18

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のぞみで知った「失敗」の重み

のぞみを復活させる芸術的ともいえる軌道設計は高く評価され、「軌道の魔術師」と呼ばれた。

スイングバイの実験をした「ひてん」の経験が生きました。最後にひてんを月の周回軌道に乗せようとしたのですが、まともにやると速度を落とすための燃料が足りない。そこに米国のジェット推進研究所(JPL)の研究者から、太陽の引力を利用して燃料不足を補う飛行計画が送られてきたのです。しゃくにさわりましたが、おかげで月を回る軌道に乗せることができました。のぞみではその時の裏返しのテクニックを利用。太陽の引力を使って加速したのです。

はやぶさが帰還した後、宇宙関連の世界的なイベントで授与される「スペース・アチーブメント・アワード」を受賞しましたが、その授賞理由にはやぶさだけでなくのぞみの軌道設計も入っていました。これはとてもうれしかった。

ただ、のぞみのプロジェクトは目的を達成できませんでした。通信機器の故障など様々なトラブルを乗り切って追加したスイングバイも成功、2003年末には火星のごく近くまで到達します。ところが電源の故障で、火星を周回する軌道にのせるための逆噴射ロケットを動かすことができなかったのです。電源を復旧しようと故障箇所の回路を焼き切るなどの試みがされましたが、復旧しないどころか、完全に音信不通になってしまいました。

のぞみが運用を停止したのははやぶさを打ち上げた数カ月後です。成果がなかったわけではありませんが、失敗は失敗。ゴールしなければ意味がない、そう痛感しました。

[日経産業新聞 2020年5月11日付]

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