卵から新型コロナ抗体? 関西人研究者のダチョウ秘話『ダチョウはアホだが役に立つ』

新型コロナウイルスとの闘いに終わりが見えない。ワクチンはまだか、オリンピックはどうするのかと不機嫌極まりない世相の中で、ほっこりする話もある。本書『ダチョウはアホだが役に立つ』は、そこに良いあんばいで染み入ってくる癒し系の科学エッセイだ。著者の塚本康浩氏は京都府立大学学長を務める研究者・教育者であると同時に、ダチョウ博士のあだ名を持つユーモアたっぷりの関西人でもある。「ダチョウさんの卵から新型コロナウイルスへの抗体がつくれたんですわ。抗体が入った卵が、なんや光り輝いて見えます」といったとぼけた語り口で、研究の最前線を紹介してくれる。

ダチョウ抗体の驚異的な生産効率

抗体とは、ウイルスの動きを封じ込める物質のことだ。さまざまなウイルスに対応する抗体を製造し、マスクや化粧品に配合して販売するのが塚本氏の活動である。

重要なのは抗体のつくり方だ。メスのダチョウに無毒化したウイルスを注射すると抗体入りの卵を産むので、そこから抗体だけを抽出する。単純に聞こえるが、塚本氏たちがこの手法を確立する以前は、マウスなどの血液を使う方法が一般的だった。

マウスの血液だと抗体の生産に1年を要し抗体1グラムで億円単位になるのに対して、ダチョウの卵だと生産に2週間、1グラム10万円だという。いかに驚異的な効率かがわかるだろう。

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