東大陸上部も納得 走り姿をかっこよく撮る
動画で解説 ちょっと良くする写真術(2)
世の中はランニングブーム。春の運動会シーズンも始まりました。日本経済新聞の報道カメラマンが写真撮影のコツを動画で解説するシリーズの2回目は、走る姿をかっこよく撮る方法です。1886年(明治19年)創部の歴史ある東京大学陸上運動部にお邪魔し、陸上部のカメラ係の方と躍動感ある走り姿を撮るテクニックを試しました。再生マーク付きの写真をクリックすると動画が始まります。
※動画はパソコンか、スマートフォンやタブレットのブラウザー版(電子版モバイル)でご覧ください。
ピントが間に合わない
東京大学駒場キャンパス(東京・目黒)の運動場が、東大陸上運動部のホームグラウンド。青葉がまぶしい5月初旬に訪ねると、関東インカレ(関東学生陸上競技対校選手権大会)を控えた部員たちが400メートルトラックで元気よく走り込みをしていた。運動場には照明設備や棒高跳びなどのフィールド競技設備もあり、大学の運動部にとっては恵まれた環境だ。
現在の部員数は約100人。関東インカレや箱根駅伝予選会などに毎年出場し、過去には箱根駅伝に出場した実績もある。「文武両道」がモットーで、学業と競技の両立を重視。「頭がいいだけと思われたくない」と語る部員も少なくない。毎年秋には永遠のライバルという京都大学との対校戦があり、すでに「打倒京大」を掲げて鍛錬を続けている。
その陸上運動部には競技会などで写真の記録を残すカメラ係が2人いる。撮影した写真はホームページや会報に掲載。しかしカメラ係は写真に詳しいわけでもないのに任命されて、戸惑うことが多いという。2年生の柏原翔一さんはそんなカメラ係の1人。話を聞くと「短距離走はスピードが速いので、ズームやピントを合わせている間に通り過ぎてしまう」と撮影の悩みを打ち明けてくれた。
運動会で失敗しないために
「走る人をいかにかっこよく撮るか?」。柏原さんと一緒に、部員が走る姿を撮影した。最近のカメラにはスポーツモードや高速連写機能を備えたカメラも多く、誰でもスポーツ写真が上手に撮れると思われがち。しかし便利な機能に頼りすぎ、思ったほどの写真が撮れなかったという人も多いはず。柏原さんもそんなワナにはまっていた。
競技会などはシャッターチャンスを逃すと2度と同じ場面はない。まさに「失敗が許されない現場」。小中学校などでシーズンが始まった運動会も同じだろう。報道カメラマンはもし決定的瞬間を撮れなくても、手ぶらで帰ることは許されない。運動会の徒競走なら、遠景であってもまずはスタート直後の姿を押さえ、そして最高の一瞬を求めて狙った位置の前後を数コマの写真でとらえる。「どんな現場でも必ず保険をかけておく」のが鉄則だ。
撮りやすいポジションから狙えば、さらに失敗する可能性は低くなる。詳しいポジション取りの方法はぜひ動画で。そして躍動する走り姿をレンズに収めるために、東大陸上運動部の柏原さんには「流し撮り」にも挑戦していただいた。目の前を駆け抜けるランナーを疾走感ある写真にするテクニック。運動会などで応用すれば、ひと味違った子供の姿を写真に残すことができる。今回の「ちょっと良くする写真術」を運動会や競技会などで役立ててください。
(映像報道部兼写真部 斎藤一美)
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