ユーグレナ創業者が語る 1万人にクッキーを配る理由『サステナブルビジネス』

もう7、8年前のことだが、ユーグレナの活動について講演を聞いたことがある。ミドリムシ(ユーグレナ)をエネルギーに変える事業の話題だ。そのときは正直に言って「もうからなさそうだ」と思った。バイオ燃料は化石燃料の何倍も高かったからだ。

だが同社の創業者にして社長の出雲充氏は、「サステナビリティ・ファースト」を事業の指針としている。つまり、「それはもうかるのか」ではなく「それは持続可能か」を第一に考えているのだ。本書『サステナブルビジネス』は、そんなユーグレナの理念、取り組みや戦略の背景について、出雲氏が自ら語ったもの。ビジネスにおいてSDGs(持続可能な開発目標)が重視されるようになった今、どのように企業が社会課題解決に向かっていけばいいのかという具体的な手引きにもなっている。

バングラデシュにある原点

ユーグレナは2005年創業。世界で初めて微細藻類ミドリムシの食用屋外大量培養に成功した会社である。

出雲氏の原点は、学生時代に見たソーシャルビジネス(社会課題を解決するビジネス)だ。バングラデシュを訪れたときに、貧困層へ「無担保」、そして「低利子」でお金を貸すというマイクロファイナンスを知った。極度の貧困層(1日1.9ドル以下で生活する人々)が多いバングラデシュで、相手を信頼して融資を行い、実際に貧しさから多くの人を救い出すビジネスが成り立つことに、大きな感銘を受けたのである。

こうした経緯もあって、ユーグレナは14年からバングラデシュで「ユーグレナGENKIプログラム」を開始。これは栄養状態の良くない子どもたちに、栄養素の豊富なミドリムシ入りクッキーを無料配布するというもの。地道な啓もう活動が奏功して、現在は学校や地域の信頼を得て、60校以上、約1万人にクッキーを届けている。

なぜここまでするのか。出雲氏は、同じくバングラデシュで活動する食品企業「ダノン」を例に挙げながら説明する。ダノンは、ヨーグルト飲料を長らく生産し提供しているが、貧しい国ではそもそももうけは出ない。しかし、やがて貧しさから抜け出し、経済発展を遂げたときに、支持され、選ばれる企業になるのは人々の健康に貢献してきたダノンだろう。人々からの「信頼の差」が、企業の持続可能性をも決めるのだと説く。

2025年に世界は大きく変わる

出雲氏の見立てによると、2025年以降、サステナブルビジネスやソーシャルビジネスが世界のトレンドとなる。なぜなら、2000年以降に成人したミレニアル世代が、世界の生産年齢人口の過半数を占めるからだ。ミレニアル世代の特徴は、所有よりも「共有」を大切にし、気候変動による自然災害の被害も目の当たりにしていること。つまり、これまでの大量生産・消費の資本主義に懐疑的で、持続可能なビジネス、社会を志向する傾向が強いのだ。ほかならぬ出雲氏もミレニアル世代である。

「もうかるのか」と真っ先に考えてしまうことはもう時代遅れなのかもしれない。サステナビリティと企業活動を結びつけるユーグレナの姿勢に学びたい。

今回の評者=高野裕一
情報工場エディター。医療機器メーカーで長期戦略立案に携わる傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。長野県出身。信州大学卒。

サステナブルビジネス

著者 : 出雲 充
出版 : PHP研究所
価格 : 1,760 円(税込み)

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