チェンジメーカーへの応援歌

巻末で、著者は「運命は決まってなどいない」というメッセージを発します。

本書は、新型コロナウイルスのパンデミックから導かれる世界を考察してきた。だが、本当に注目したのは、今まさに猛烈な勢いで加速しつつあるさまざまな力の様子だ。世界の向かう先を知るには、もう一つ、人間がどのような作用をもたらすか考える必要がある。人間を社会を、そして世界をどちらの方向に向かわせたいのか。それを決めるのは人間だ。むしろ、今の私たちには昔より広い可能性がある。多くの場合は、歴史が転がり始めた道を進むばかりで、途中で進路変更は難しい。しかし、新型コロナウイルスが社会をひっくり返したせいで、人々はそれまでの固定観念から解き放たれた。すでにあらゆることが変化している。この状況でなら、さらなる変化を導くことも、過去と比べれば容易だ。
(終章 運命は決まってなどいない 311~312ページ)

本書は、次世代のリーダーたちにチャレンジを呼びかけています。ビジネスの世界でも、社会的起業の世界でも、コロナによってむしろ変革を起こせる可能性が広がっていると訴えます。「チェンジメーカー(変革者)」になりたいという気持ちを持つ若い世代にこそ、手に取る価値のある一冊といえるでしょう。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・田口恒雄

変化が加速する世界を生き抜くための知的な探求――本書を一言で紹介すれば、こんな言葉になるでしょう。この試みは、新型コロナウイルスの世界的感染流行が発生した2020年春、著者が一枚の紙に書き出したリストから始まりました。そのリストには、本書で取り上げているテーマがほぼ網羅されていたといいます。そこから、わずか数カ月ほどで濃密な内容の一冊にまとめ上げる力量には驚かされます。

本書は、読者への力強くポジティブなメッセージで貫かれています。世界はひよわにみえるかもしれないが、歴史をみれば、人間がどれほど強靱(きょうじん)であるかを理解できると語り、「人間は与えられた環境のもとで、自分で自分の歴史を作る」というマルクスの言葉を引いて、歴史に学びつつ、目の前で作用している大きな力を捉え、手立てを講じる重要性を説きます。

「新しい世界への道は開かれた。その機会をつかむか、ふいにするかは私たちしだいだ。運命は決まってなどいない」とい一文で本書は結ばれていますが、この警句はまさに、困難に立ち向かうための勇気を与えるとともに、覚悟を迫るものです。著者が長年培ってきた幅広い教養、歴史的な知見に裏打ちされた本書から、見えざる世界に臨むための多くのヒントが得られると思います。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

パンデミック後の世界 10の教訓

著者 : ファリード・ザカリア
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 2,200 円(税込み)

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