大感染を警告していた作家の目 コロナで世界を変える『パンデミック後の世界 10の教訓』

チェンジメーカーになりたいという気持ちを持つ若い世代へ
チェンジメーカーになりたいという気持ちを持つ若い世代へ

新型コロナは、世界をどう変えたのか。そして、人類はこれからの世界をどう変えていくことができるのか――。今回紹介する『パンデミック後の世界 10の教訓』は、感染爆発のリスクを早くから警告していた米国の著名コラムニストが危機にどう対処したらよいかを考え抜いて、未来へ向けた教訓をまとめた一冊だ。幅広い知識と深い洞察を示しながら、「世界は自分たちの望むように変えられる」という勇気を若い世代に与えてくれる。

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ファリード・ザカリア氏

著者のファリード・ザカリア氏はCNNの報道番組「ファリード・ザカリアGPS」のホスト役として知られる人物。ワシントン・ポスト紙コラムニストやアトランティック誌編集長も務めています。『アメリカ後の世界』『民主主義の未来』などの著書があるベストセラー作家でもあり、2019年にフォーリン・ポリシー誌により「この10年における世界の思想家トップ10」に選ばれました。エール大学卒業後、ハーバード大学政治学博士。これまでフォーリン・アフェアーズ誌のマネージング・エディター、ニューズウイーク誌国際版エディター、タイム誌コラムニスト、ABCニュースのアナリストなどを歴任しています。生まれはインド西部のムンバイです。

トランプ政権の予算削減を批判

ビル・ゲイツ氏が2015年に「人類最大の危機はウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)であり、準備が必要だ」と説いていたことはよく知られています。著者も2017年6月に自身がホストを務めるCNN番組で、パンデミックを取り上げています。当時のトランプ米大統領が公衆衛生および疾病にかかわる主な機関の予算削減を打ち出したタイミングでした。発言の一部を引用しましょう。「バイオセキュリティと世界的感染拡大の問題は国境を問いません。病原体、ウイルス、疾病は機会均等な殺人者なのです。危機が起きたとき、われわれは、もっと対策に投資をしておくべきだった、もっと世界で連携しておくべきだったと悔やむことでしょう。けれど、そのときはもう手遅れなのです」。

本書のテーマは、パンデミック後により良い世界を実現するために私たちがなすべきことです。この課題を考えるために「10の教訓(レッスン=Lesson)」を導き出していきます。ジャーナリストで作家でもある著者は、歴史、政治、医学、国際情勢など幅広いフィールドから材料を集めてきて、提示します。「本書はパンデミックに関する本ではない。パンデミックの結果として導かれる世界、そしてさらに重要なことだが、パンデミックに対する私たち自身の反応によって導かれる世界に焦点を合わせている」と冒頭で記します。

著者は素材を提供し、物の見方を提示しますが、それはあくまで読者に自分の考えをまとめてもらうためです。答えを導くのが読者であるという意味では、「10の講義(レッスン)」でもあるのです。各レッスンは、次のタイトルで進められます。

(1)シートベルトを締めよ
(2)重要なのは政府の「量」ではない、「質」だ
(3)市場原理だけではやっていけない
(4)人々は専門家の声を聞け、専門家は人々の声を聞け
(5)ライフ・イズ・デジタル
(6)アリストテレスの慧眼(けいがん)――人は社会的な動物である
(7)不平等は広がる
(8)グローバリゼーションは死んでいない
(9)二極化する世界
(10)徹底した現実主義者は、ときに理想主義者である
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