テレワークで会社は激変 21年の日本を三菱UFJが予測『2021年 日本はこうなる』

2020年は、誰にとっても特別だった。経済や社会、個人の生活も大きく変わり、新しい年がどうなるのか例年以上に気になってくる。本書『2021年 日本はこうなる』は、最近の米中対立、原油価格から個人の働き方、子どもの見守りまで、重層的に潮流を読み解いていく。

3部構成になっており、第1部は日本と世界の経済情勢を俯瞰(ふかん)。第2部では2021年に鍵となる「AI」「SDGs(国連が定めた持続可能な開発目標)」「スマートシティ」など6つのトレンドを詳説し、来るべき時代の方向性を示す。第3部では、企業経営、産業、働き方などのジャンルから注目すべき74のキーワードをピックアップし、各分野の研究員らが解説する内容となっている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの編集だ。

SDGsが経営の中核に

まず大きな潮流の1つとして、2021年は「SDGsの達成」に向けた取り組みがますます加速すると予想されている。国連がSDGsの目標にひもづけた対パンデミック(世界的大流行)の支援策を打ち出すなど、国際社会はコロナ禍をきっかけにより積極的に持続可能な社会や経済を志向する見込みだ。

日本でも、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による方針表明もあり、社会的意義の高い企業に投資するESG投資がここ数年来増えてきている。ただ、28カ国の16~74歳計約2万人を対象にした調査では、日本のSDGsの認知度は最下位だったと本書は指摘する。19年に都内企業に対して東京都産業労働局が行った調査では、55.9%が「SGDsについて何も知らない」と答えている。日本の企業は今後、SDGs、ESGの視点を経営の中核に据えることが期待される。

マネジメントは「個」に対応

キーワードは各見開きで簡潔に説明されていてわかりやすい。「テレワーク」を見てみよう。2020年に比べ、2021年はさらにテレワークが定着し、洗練が求められるようだ。上司なら、部下のマネジメントの重要性が従来以上に高まると本書は見る。

例えば、業務の進捗管理をするときのコミュニケーションを柔軟に変更することが必要になりそうだ。力のある部下であれば思い切って任せる、新入社員や異動したての部下などには頻繁にコミュニケーションを取るなど個々人に合わせた多様なコミュニケーションが大切になる。業務進捗管理をしっかり行えば、アウトプットの評価だけでなく、テレワーク下では見えにくい業務プロセスの評価も可能になる。

また、職場コミュニケーションでは「言語発信の質を高める」ことが重要だ。リアルの職場と違って発信者の雰囲気や間接的な情報を得られないため、受信者は発信された直接的な情報だけを頼りに解釈する。そのため、言語発信の質が低いと認識の共有がうまくいかない。これには身に覚えのある方も多いのではないか。

本書はマクロとミクロの多角的な視点で動向を捉えつつ、特に社会・文化など人々の生活に対して大きな章を割いていることが特徴だ。社会、人がどのように変わるのか、読者も自分事として将来を見渡しやすいのではないだろうか。新しい年に向けた心構えをつくるヒントとして、ぜひ参照してほしい。

今回の評者 = 高野裕一
情報工場エディター。医療機器メーカーで長期戦略立案に携わる傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。長野県出身。信州大学卒。

2021年 日本はこうなる

著者 : 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
出版 : 東洋経済新報社
価格 : 1,760 円(税込み)

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