非正規の待遇格差なくなる? 雇用主に説明責任
日本のパートタイム賃金水準はフルタイムの約6割にとどまる(写真はイメージ)
非正規で働く人が「待遇格差」を訴えた訴訟で、最高裁が判断を示したようね。非正規で働く人は増えているけど、今回の判断はどんな影響があるのかな。待遇改善につながるのかしら――。最高裁判決の内容や雇用への影響について、水野裕司編集委員が池田瑞子さんと坂東橋なおさんに解説した。
――非正規と正規で待遇の違いは大きいのですか?
欧米の主要国と比べ、日本の格差は大きいといえます。日本の場合、パートタイムで働く人の賃金水準は、フルタイムで働く人の6割ほどにとどまっています。徐々に上がってはいますが、欧州の主要国では7~8割が当たり前で、9割近い国もあります。
一方、日本ではパートや派遣・契約社員などの非正規労働者は増え続けています。1990年は2割程度でしたが、現在は4割近くです。個人消費を拡大し経済を活性化する上でも、待遇の改善は大きな課題といえます。
政府も関連する法律を改正するなど対策を進めています。一定の条件を満たす場合には、使用者による「雇い止め」は認められなくなりました。正社員と職務内容や人材活用の仕組みが同じであれば、差別的な取り扱いが禁止され、不合理な待遇格差は認められなくなりました。
――最高裁が待遇格差について判断を示しました。
10月13、15日に、計5件の訴訟について判断を示しました。13日は大阪医科薬科大と東京メトロの子会社で働くアルバイト職員や契約社員が、賞与や退職金が支給されないのは不合理だと訴えた訴訟です。15日は日本郵便の契約社員が、手当や休暇の格差是正を求めた3件の訴訟です。
最高裁は手当や休暇については「与えられないのは不合理」と判断しました。例えば日本郵便では正社員に年末年始勤務手当が支給されていましたが、契約社員は支給されていませんでした。これに対し最高裁は、多くの人が休日として過ごす時期に働くことへの対価で、支給しないのは不合理としました。
一方で、13日の判決で争われた賞与と退職金については、支給しないのは不合理とはいえないと判断しました。