マーケティング次第で広がる、ファンの裾野

興行とテレビ放送というアナログからデジタルへの転換、世界市場を見据えた戦略を加速する。

プロレスは国境という壁がありません。例えば日本で最も人気があるプロスポーツの1つである野球は、世界で見れば盛んなのは10カ国・地域程度に過ぎません。これに対してプロレスは世界中で楽しまれています。

その中で新日本プロレスは売り上げ規模で世界2位、日本では1位です。非常にポテンシャルがあるのです。人気の理由は新日本プロレスならではのプロレスを提供できているからだと考えています。

つまり、海外展開できる有力なコンテンツなのです。これまで日本から海外へ発信展開するコンテンツはアニメやマンガ、ゲームなどに限られていましたが、ほかにもいろいろあるはずです。

以前の新日本プロレスはいわばアナログビジネスでした。興行のチケットを売って、試合をしてグッズを売ることが中心だったのです。興行は年間150日ほど開いていますが、日数的には限界です。選手が休まなければいけないし、移動や設営、撤収などの手間もかかります。300日に増やすことは不可能です。海外興行も行っていますが限度があります。

こうした興行中心のアナログビジネスにデジタルの要素を加えようとしています。興行を見に来られない人向けには14年からインターネットの動画配信サービスを始めました。Tシャツや帽子などのグッズも電子商取引(EC)で扱うことで、世界のどこにいても買うことができるようになっています。

選手一人ひとりのブランド化も目指しています。選手はそれぞれ得意技や能力などがあり、個性的です。それぞれにファンがついています。その個性を生かすために、SNSなどを使って情報を発信します。一人ひとりの選手にもツイッターをやってもらっています。

ファンは試合以外の情報をほしがる。

映画のクライマックスに決闘シーンがあるとしましょう。そのシーン自体は映画全体のごく一部です。それだけでも楽しいかもしれません。しかし、映画ではどうしてそういう決闘をするようになったかや、どういう準備をしてきたのかなど、クライマックスに至るまでの物語を長い時間をかけて語ります。

これまでのプロレスはそれが不十分だったのです。ゴールデンタイムの放映はあくまでも決闘シーンであり、実はそこに至るまでの物語があります。SNSを使えば「選手はこんな準備をしている」とか、「あいつだけには負けたくない」といった思いなど物語をみせることができます。

選手の私生活を見せることも効果的です。実はケーキ好きだとか猫が好きだとか。そうした要素があると、より選手に感情移入ができるようになるでしょう。もっと応援したくなるし、もっと好きになる。グッズもほしくなる。見せ方を工夫する、つまりマーケティングに力を入れれば、日本での人気もまだまだ広げられると思っています。(北郷達郎)

ハロルド・ジョージ・メイ 新日本プロレスリング前社長
1963年オランダ生まれ。米バックネル大でマーケティングを学んだ後、87年にハイネケン・ジャパンに入社。93年米ニューヨーク大院修了。2006年に日本コカ・コーラ副社長兼マーケティング本部長。14年3月にタカラトミーに入り、15年6月に社長兼CEOとなって業績を急回復させた。18年6月から社長、20年10月に退く。

[日経産業新聞 2019年7月26日付]

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