人生は最後に帳尻が合う
次なる夢。渋谷に新たな「聖地」を作る。
「業界発展にこの音楽ホールが必要です。やるなら渋谷でないと意味がありません」。17年春ごろ、バンダイナムコホールディングスの田口三昭社長に酒席で直談判しました。1000坪の目ぼしい土地も見つけて「ここしかないんです」とも。「渋谷プロジェクト」が始まりました。
心にあるのは夜の渋谷の光景でした。ライブハウスの渋谷eggmanから出てきた汗だくの若者と、NHKホール帰りの奥様方が公園通りを笑顔で歩いている。渋谷こそが音楽のシンボルになる街だと実感しました。
一方、最近は2000人規模のホールが足りません。数千人の会場を満員にするアニソンのアーティストが増えましたが、実際そこにたどり着くまでが大変。成功を夢見て汗を流す方々に歌う場所を作りたいのです。レコーディングスタジオも併設して、アニメ音楽だけでなく、あらゆるアーティストが巣立っていく場所です。
人生は最後に帳尻が合うと思っています。レイジーが解散した1980年代から約10年、ぼくは成果を出せないでずっとくすぶっていました。だから、ランティス創業後はがむしゃらに働いてきたのです。ただ、人生を振り返れば、その10年も含めて様々な局面で出会った人たちとの縁が、思いもしない形で仕事につながっている。不思議な感覚です。
渋谷プロジェクトは施設の詳細を含め検討中ですが、年齢的にぼくの最後の大仕事になるのではないかと思っています。会社を退職したら、ホールで楽器管理のスタッフに雇ってくれへんかな。
=この項おわり
[日経産業新聞 2018年8月23日付]
※「仕事人秘録セレクション」は金曜更新です。