――問題点や新型コロナの影響はないのですか。
ギグワーカーは複数の仕事や契約先を確保している人や、正社員として安定収入を得ながら副業している人だけではありません。単一の仕事や契約先に頼っているフリーランス労働者も多いです。今回のコロナ禍では生活を支える収入が途絶えた人も多く、こうした働き方のもろさを見せつけました。
フリーランスのギグワーカーの場合は個人事業主となるため、仕事中の事故や病気の感染、災害による発注途絶などのリスクを基本的には個人で背負うことになります。契約相手が不誠実な企業で対価を支払わなかったり、無理な納期を要求されたりする事態もしばしば耳にします。
こうしたマイナス面の解決を模索する動きは世界で広がっています。20年1月には米カリフォルニア州で、ギグワーカーらを個人事業主ではなく従業員として扱うよう企業に義務付ける州法が施行され、従業員としての保障を受けられる道が開けました。ドイツでは従業員と個人事業主の間の契約形態として位置づけ、制度を整えようという動きがあります。
米国では5千万人、日本でも1千万人を超す人たちが副業を含めたギグワークに従事しているという調査もあります。新しい働き方をどう健全に発展させるか、知恵の絞りどころといえます。

ちょっとウンチク
交渉力強化へ互助組織も
いま日本のギグワーカーの間で「ギルド」を名乗るグループ作りが流行している。本来は中世ヨーロッパで業務を独占した同業者団体を指す言葉だが、現代日本のギルドはフリーランスが集まる互助グループだ。受注力や交渉力の強化、ブランドの確立を目的としているという。
個人事業者の団結では先達の地にあたる欧州ではギグワーカーの本格的な互助組織が各地に生まれている。同業者のほか、同一地域のクリエーターによる独自のプラットフォーム(受注窓口)もネット上に相次ぎ登場した。ギグ経済のあり方も進化している一例といえる。(編集委員 石鍋仁美)
鈴木 正美さん 10年以上務めた会社を2019年9月末に退社。カラーコーディネートの資格を生かして起業した。「自分の強みや魅力を引き出すファッション戦略を働く女性向けに助言しています」
溝江 淳子さん 生協の生活アドバイザー。関西在住でも東京開催のセミナーなどにオンラインで遠隔参加できるようになった。「コロナ問題が収束しても、遠隔参加の道を閉ざさないでほしいです」
[日本経済新聞夕刊 2020年6月15日付]
※ 「ニッキィの大疑問」は原則月曜掲載です。