筋のよい仮説が立てられる 7ステップ思考法の使い方『筋の良い仮説を生む 問題解決の「地図」と「武器」』

ホテルの宿泊部門の人材育成担当だった時のことだ。部門に対して売り上げの伸び悩み対策を打つよう上司から指示を受けた。そこで、お客様満足度を高めるために接客の質を上げたり、スタッフを外部研修に出したりしたものの、一向に成果につながらず、途方に暮れてしまった。私のように問題解決の糸口が見つからず堂々巡りになる人は多いのではないだろうか。

こうした問題解決における「迷子」を抜け出す方法を教えてくれるのが本書『筋の良い仮説を生む 問題解決の「地図」と「武器」』。解決に向かう段取りと仮説を進めるためには、「地図」と「武器」が重要と説く。著者の高松康平氏は、オンラインの経営大学院であるビジネス・ブレークスルー大学(BBT)で問題解決講座の責任者を務める人物だ。

地図は問題解決のステップ

「地図」とは、問題解決のプロセスを示すフレームワークのことだ。著者は「問題解決マップ」と呼ぶ。現状分析→問題認識→情報収集→課題抽出→解決策の方向性→アイデア創出→評価の7ステップから構成されている。順番にクリアすることで、経験や知識がなくとも問題解決が行えるようになり、今何に取り組んでいるのか明確になる。

「武器」とは、問題解決のステップごとに意識すべき考え方だ。本書では問題解決の7ステップに沿って「7つの武器」が説明されている。中でも重要な武器が「情報収集」ステップにおける思考法、名づけて「事業部長の視点」だ。

これは事業全体の流れを俯瞰(ふかん)的に捉える方法である。具体的には、「市場」「ターゲット」「顧客」「組織」「会計数値」といった観点をビジネスの流れに沿って並べた俯瞰図を見ながら、網羅的な検討をし、仮説を立てていくことだ。「事業部長の視点」の特徴はビジネスの全体像が一目でわかること。実際に事業部長でなくても視点を高く持ち、体系的に考えていける点だろう。

思考の偏りに気づかせる

冒頭の私の場合、「問題解決マップ」の中の「アイデア創出」にいきなり飛んでしまったこと、さらに人材育成の観点でしか考えていなかったために、解決策が漠然としてしまったことが迷子になった要因のようだ。仮に私が宿泊部門全体を統括する事業部長の視点を持っていたら、「顧客ターゲットの見直し」や「商品・サービスの拡充」など別領域の観点から対策を考えていたはずだ。

単身のツーリストとビジネス需要が多くを占めていたホテルだったが、例えばファミリー層の利用者を増やすことができれば、売り上げのアップが見込める。そこに目を付けると、家族層が満足してリピーターになってくれる接客サービスを売り物にする切り口が浮かんでいたはずだ。そして、保育や介護のできるようなスタッフの育成策やサービスの充実を上司に提案できていたと思う。

本書の地図と武器は、自分の思考の偏りに気づき、新しい見方を教えてくれるものだ。もやもやしているときにはいったん視野を広くすることが、次なる一手に結び付く。本書の知恵は自分のキャリアを高める道しるべともなってくれそうだ。

今回の評者=若林智紀
情報工場エディター。国際機関勤務の後、人材育成をテーマに起業。その後、ホテル運営企業にて本社人事部門と現場マネージャーを歴任。多岐に亘る業界経験を持つ。千葉県出身。東大卒。

筋の良い仮説を生む 問題解決の「地図」と「武器」

著者 : 高松 康平
出版 : 朝日新聞出版
価格 : 1,760円 (税込み)

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