ポイント還元だけじゃない キャッシュレスで節約家計

キャッシュレスというと、「総額〇億円のポイント還元」といった大々的なキャンペーンが行われたり、国の「キャッシュレスポイント還元事業」があったりして「おトク」という点が注目されがちですが、実はお金を管理するのにとても便利なツールです。その方法をご紹介します。
キャッシュレスにさまざまなメリット
キャッシュレス決済のツールには、おなじみのクレジットカードのほかに、デビットカード、「〇〇ペイ」といったスマホでバーコードやQRコードを読み取るコード決済などがあります。
いずれも、使うとポイントが貯まったりキャッシュバックが受けられたりする、現金を持ち歩く必要がなくなる、というのがメリットです。ATMから現金を引き出さなくてすむので、うっかり時間外にお金をおろして手数料がかかってしまった、ということもなくなります。
最近は、新型コロナウイルス感染を避ける観点から、誰が触れたかわからないコインや紙幣にさわりたくないという理由でキャッシュレスを利用する人もいるようです。
キャッシュレスにはこのほかに、支出を把握しやすい、お金を計画的に使えるという利点もあります。キャッシュレスによってお金の管理がしやすくなるのです。
キャッシュレスで支出を「見える化」する
なかなかお金がためられないという人が支出を減らしたいと考えるなら、自分がどんなふうにお金を使っているかを把握する、つまり支出の状況を「見える化」することが欠かせません。毎月の積立額をもう少し増やしたい、という場合も、支出の「見える化」でムダな支出を洗い出し、それをなくすことで積立に回すお金を捻出できます。
この「見える化」に最適なのは家計簿ですが、レシートを見ながら手書きで支出を記録して電卓で集計するのはさすがに手間がかかりすぎますよね。そこでキャッシュレスツールを使います。

コード決済だと、支払った金額の記録がスマホに残るので、それを家計簿アプリやお小遣い帳アプリに入力すれば、デジタルで家計簿をつけることができます。
デビットカードは、支払い金額が銀行口座から即時に引き落とされ預金通帳に記載されるので、通帳を家計簿代わりにすることができます。ネットバンキングを利用しているなら、支出の一覧をネットで見られるほか、銀行口座と連携できる家計簿アプリを使えば口座の情報をアプリが自動的に読み込んでくれるので、自分で入力しなくてもアプリに支出が記録されます。
こんなふうにキャッシュレスを利用して支出を「見える化」すれば、何にお金を使いすぎているのか、減らせる支出は何か、などを知ることができます。レシートを取っておく必要がないので、財布の中にレシートがたまってパンパンになることもありません。
「仮想袋分け」で使いすぎを防ぐ
家計管理の方法としてよく利用されているものの一つに「袋分け」があります。例えば、1カ月の食費を決め、それを5等分して5つの袋に入れ、1週間の食費を袋の中の金額でまかなう、といったやり方です(5つに分けるのは、5週目は日数が少ないので、ちょっとぜいたくしてもよいことにしたり、残った金額を貯蓄に回したりするためです)。
これをキャッシュレスに置き換えます。銀行口座からチャージするタイプのコード決済を使い、週の初めに1週間分の食費をチャージしておき、その範囲内で買い物をするのです。つまり「仮想袋分け」ですね。家計専用の銀行口座とデビットカードを作り、口座に1カ月分の家計費を入金しておき、その範囲で家計をまかなう、といった方法もあります。
キャッシュレスツールを使って、お金の使い過ぎを防ぐわけです。

自分に合ったツールの使い分けも
支出の見える化や仮想袋分けにキャッシュレスを使う場合のポイントは、利用するツールを絞ることです。例えば食料品の買い物でAスーパーでは「〇〇ぺイ」、Bスーパーでは「××ペイ」とやっていると、支出が把握しづらく、仮想袋分けもできません。
ですから、キャッシュレスの決済ツールを選ぶときは、自分がよく利用するお店をカバーできるものを選ぶことが大切です。コード決済は使えるところ・使えないところがあったりするので、利用できる範囲の広いデビットカードのほうがよいかもしれません。
逆に、キャッシュレスツールの使い分けも考えましょう。
例えば、Suica(スイカ)やPASMO(パスモ)といった交通系のカードは、駅の構内のキオスクやコンビニでの買い物にも使えます。でも、それでお菓子や缶ビールなどを買ってしまうと、交通費と食費がまざってしまいますよね。交通系カードは交通費以外には使わないのがベターでしょう。
カップルなら、家計用の口座とそれぞれのお小遣いの口座を分けて、口座ごとにデビットカードを作る。あるいは、家計は家計用の口座から「〇〇ペイ」にチャージ、自分のお小遣いは自分の口座から「××ペイ」にチャージする、というふうにすると、家計とお小遣いを別々に管理できます。
どのキャッシュレスツールをどのように使うかに決まりはありません。自分なりのやり方で、キャッシュレスをお金の管理に活用してください。
キャッシュレスはなんとなく怖い、という人もいますね。たしかに不正に使用されるリスクは考えておかなければなりません。スマホにはロックをかけておく、暗証番号を使いまわさない、といった対策は不可欠です。
デビットカードは、利用するたびに通知のメールが来るので、不正使用されたときすぐにわかるのがメリットです。コード決済ツールは、銀行口座からのチャージで使うようにし、チャージする金額を多くしすぎないようにするとよいでしょう。
便利なキャッシュレス決済ですが、スマホの電池が切れたり、停電でコードやカードの読み取りができなくなったりすることもあるので、多少の現金は持ち歩いたほうがいいですね。

オフィス・カノン代表。ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級ファイナンシャルプランニング技能士。千葉大卒。法律雑誌編集部勤務、フリー編集者を経て、ファイナンシャルプランナーとして記事執筆、講演などを手掛けてきた。著書に「だれでもカンタンにできる資産運用のはじめ方」(ナツメ社)など。http://www.m-magai.net
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