笑顔生む筋トレのすすめ 表情筋は「慣れ」が肝心

「ニコッと笑って」に悩まされた過去

かつてラジオが主な仕事だった私は、テレビの世界に居場所を広げた当時、この「笑顔問題」にぶつかったことがある。当たり前の話だが、ラジオでは顔は映らない。声だけが私の気持ちを伝える。ところが、テレビに出始めると、声よりも「見た目」を重視されるようになる。ディレクターには最初のうち、しょっちゅう「梶原さん、もっと笑って」「顔が硬い」「にらまないで」などと、表情に注文をつけられた。彼らの不満は共通していて、「笑顔が足りない」ということだった。

新しい番組のスタートにあたっては、「番宣(番組宣伝)」と呼ばれるプロモーションが欠かせない。短いCM風映像を撮ったり、ポスターを作ったり。出演者の一人として私も映り込むわけだが、「梶原さん」と名指しで「ニコッと笑って」という駄目出しを食らう。テレビ慣れしているほかの出演者は当たり前のようにニッコリしているのに、私だけがうまく笑えていないから、やたらと目立つようなのだ。しかし、この「ニコッと要求」にうまく応じられず、40代前半にして途方に暮れる思いだった。

あまりにも「笑顔不足」を指摘されるので、さすがにどうにかしなければと思い、表情に関する本を読みあさった。「人生で愉快だった場面を思い出せ」「頭の中で落語を流せ」など、いろいろな教えに触れた。だが、最も助けになったのは、当時の出演者仲間だった、俳優の峰竜太さんにもらったアドバイスだ。彼はこう言った。「笑いは筋トレ」。もともとモデル出身の峰さんはさわやかな笑顔を含め、様々な表情を見事に使い分けていた。その彼は「表情筋を鍛えなきゃ」と教えてくれたのだ。

「さあ、笑え」と脳に命令しても、実際に笑顔を生み出すのは、顔の筋肉である表情筋の役目だ。つまり、頭でいくら笑おうと試みても、実働部隊にあたる表情筋がスムーズに動いてくれないと、表情はほころばない。むしろ、脳と表情筋のアンバランスのせいで、ぎこちない笑顔になりかねない。初対面の相手に与える第一印象としては、むしろ逆効果だ。

つまり、脳からの命令を受けて、自然な笑顔になるよう、日頃から表情筋を鍛えておく必要がある。峰さんのアドバイスはこれを端的に語ったものだ。次々と変わる、写真家の注文に応じて、表情も変化させるモデル技術を身につけた峰さんならではの貴重な助言だった。

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