伝わるプレゼン資料作り 質を高める「ひと手間」とは『ニワトリをどう洗うか?』

残念ながら、PowerPointを操作しているだけでは説得力のあるプレゼン資料は作れない。担当になったもののプレゼンの内容をより良くする方法がわからず、とりあえずパソコンの画面に向かっているというのは珍しくない状況だろう。そんな時こそ、「そもそも論」から「プレゼン後に必要なこと」までわかりやすく解説している本書『ニワトリをどう洗うか?』(斉藤 裕一 訳)を参考にしてほしい。

ユニークなネーミングは、著者の原体験が起源だ。8歳の時、初めてのプレゼンテーションで実演を交えて「ニワトリの洗い方」を説明し、トップの得点を獲得したエピソードが由来になっている。カルキンス少年は今や本書の著者であり、5000回以上のプレゼンを成功させてきたプロ。経営戦略コンサルティング会社のブーズ・アレン・ハミルトンを経てハーバード大学経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得している。その後、クラフト・フーズに勤務して「タコベル」などのブランドマーケティングを担当してきた。現在はマーケティングコンサルタントであり、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で教授も務めている。

まず話してから内容をまとめよう

著者によれば、プレゼンの中核をなすのはストーリーだ。論理的な思考と情報の流れが重要となる。内容が論理的につながっていると、聞く側が直感的に理解できる。わかりやすい話だと受け止められれば、提案も受け入れられやすくなるという。

資料の各ページを作る前に全体的な構成を決めるのが原則。構成を固めるのは容易ではないが、そのための具体策として「要点から考える」「始まりを決める」といった方法を挙げている。それでも難しい場合はシンプルな方法のひとつとして、話してからその内容を書き起こしてまとめる方法も紹介している。人間には話すという本能的な性向があり、書くよりも話すほうがうまい人が多いからだ。

わかりやすく話すためには、聞いている人を子どもだと思ってお話を聞かせるように心掛ければいい。録音するか、他の誰かに聞かせるかして、要点が正しい順序でつながっているかを確かめることが重要だ。自然な会話に近いほど情報の流れはスムーズでプレゼンもうまくいくという。

そもそも本書は、マーケティングの分析は優秀なのにプレゼンで失敗している学生を見かねて書かれたもの。プレゼンに自信がない人でもわかるように解説しているため、プレゼン慣れしているビジネスパーソンにとっては知っている内容もあるかもしれない。しかしプレゼンが得意でも苦手でも、上達するには経験によってスキルを高めることが必要だ。自信を高め、場数を踏み、さらなる成長につながる好循環へと本書が導いてくれる。

今回の評者 = 平昌彦
「ひらめき」や「セレンディピティ」を提供し、8万人以上のビジネスパーソンに利用されている書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」の編集企画部所属。これまでに編集者やライターとして関わってきたメディアは60以上。MENSA(メンサ)会員。

ニワトリをどう洗うか? 実践・最強のプレゼンテーション理論

著者 : ティム・カルキンス
出版 : CCCメディアハウス
価格 : 1,760円 (税込み)

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