心を打った「犬と私の10の約束」

レオが我が家にやって来たのは、長年の友人からの電話がきっかけだった。

友人「子犬が4匹生まれて、家が大変なことになっている。良かったら見に来ない?」

その2年前、13年間を共にした愛犬「ルル」を亡くした。私たち夫婦はひどく落ち込み、「二度と犬は飼わない」と心に決めていた。

友人から電話をもらったその日は、よほど暇だったからか、魔が差したのか、気乗りのしない妻を伴い、友人の家を訪れた。生まれて3カ月ほどの子犬たちが部屋で元気いっぱい走り回るなか、1匹だけ椅子の下にたたずみ、我々をじっと見上げるおとなしい犬がいた。

「あ、この子、赤ちゃんの頃のルルちゃんみたい」。妻の表情が一瞬、和らいだ。

友人「実はこの男の子だけ、まだ引取先がないんですよ」

その後、何度か友人の家を訪れ、結局、その子をもらい受けることにした。友人が言った。「梶さんは経験者だから必要ないと思うけど、犬を譲る先の人に読んでもらってるんです」

壁に掛けられたボードを見ると、「犬と私の10の約束」と書かれたポスター大の紙が目に入った。読み進むにつれ、胸が熱くなった。

1)私の一生は10年から15年です。私はあなたと離れることが一番辛いことです。そのことを覚えておいてほしいのです。

2)あなたが私に何かを求めたとき、私がそれらを理解するには少し時間が必要です。だから待っていてほしいのです。

3)私を信頼してほしい。それが私にとってあなたと共に生活できる、一番の幸せなのですから。

4)私を長い間叱ったり、罰として閉じ込めたりしないでください。あなたには楽しみがあって、たくさんの友達もいるはず。でも、私には大好きなあなたしかいないのです。

5)時々話しかけてほしいんです。言葉は分からなくても、あなたの声は十分、私に届いていますから。

6)あなたが私にしてくれた全てを、私は決して忘れません。

7)私をたたく前に覚えておいてほしいのです。私には鋭い歯であなたを傷つけることができるけど、私は絶対にあなたを傷つけないと決めているのです。あなたが大好きだから。

8)あなたの言うことを、私が聞かないときは理由があります。そんなときは私が何かで苦しんでいるときかもしれません。

9)私が年を取っても、仲良くしてください。

10)最後のそのときまで一緒にそばにいてください。そして、どうか私を忘れないでください。私は生涯であなたを一番愛しているのですから。

作者不詳という、この10の戒めは、個々の愛犬家がそれぞれに手直しを加えた、何種類かのバージョンが愛犬家の間で広まっているという。「説教臭い」「宗教っぽい」「余計なお世話」など、様々な指摘もあるようだが、今では我が家でレオとのより良い関係を築くうえで貴重な指針となっている。

これを読んで「散歩スマホはやめようかな」と思う人も出てきたらうれしいのだが。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜掲載です。次回は2019年9月26日の予定です。

梶原しげる
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

成果につながる「伝え方」「見せ方」を磨く講座/日経ビジネススクール

ビジネスの相手を説得できる会話力・プレゼン力・文章力などが身につく日経のおすすめ講座

>> 講座一覧はこちら

ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら