ブレンド「妥協」で失敗 在庫の山、力量不足を痛感サントリースピリッツ 名誉チーフブレンダー 輿水精一氏(7)

こうしてできた「座」は目標の半分ほどしか売れず、在庫が積み上がった。

パソコンを開けば、計画に対する日々の売れ行きがどうかは分かる。新製品のもの珍しさから試しに買ってくれたお客様はいても、再度手にしてくれてはいない状況が続いた。初めのうちは、値段が高かったからだなど、売れない理由をほかに探そうと意識が向いた。しかし、再び購入してもらえないのは、味への満足度が低いからだと認めざるを得ない。

「本当にうまいと思ってつくったのか」。ある先輩に浴びせられたこの言葉はものすごくこたえた。自分が納得したものなら反論もできただろうが、疑問がありながら目をつむったという後ろめたさがあり、何も言えなかった。

今になって思うと、既存商品の風味とは全く異なる「膳」の成功体験を意識し過ぎたのか、従来にない味わいをどこまで引き出すか、その加減が分からなくなっていたのかもしれない。ブレンダーとしての力量不足を痛感した。

自分が本気でうまいと思えないものを、どうしてお客様に自信をもって勧められるだろうか――。この失敗はブレンダーの原点に立ち返る契機となった。

自らに妥協しないのは難しい。しかし、飲み手の好みを知り、自分の感覚を信じて、もうやり残したことはないというところまで一滴一滴ブレンドを重ねる。この信念が私を貫く基軸となっている。

輿水精一
こしみず・せいいち 1949年山梨県出身。73年山梨大工卒、サントリー(現サントリーホールディングス)入社。99年にウイスキー造りの技術トップである第4代のチーフブレンダーに就いた。「響12年」などを手掛けた。現在はサントリースピリッツの名誉チーフブレンダー。

[日経産業新聞 2008年11月26日付]

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