ひらめきブックレビュー

学んだことを仕事に生かせ 思考の整理は「20字」で 『すべての知識を「20字」でまとめる 紙1枚!独学法』

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最近読んだ本を思い出してほしい。「ためになったことは何か」と問われたら、答えられるだろうか。書いてあったことすら覚えていない……。そんな人はA4サイズの紙とペンを用意しよう。その紙とペンが、あなたに「学びを仕事に活かす」という大きな成果をもたらしてくれるはずだ。

本書『すべての知識を「20字」でまとめる 紙1枚!独学法』は、フレームワーク(枠組み)を活用した学習法を提唱している。具体的には、紙に書いた枠を埋めながら、最終的に「20字のまとめ」をつくることで学びを定着させていく。トヨタ自動車に勤めていた著者が、身につけた"思考整理"の習慣をもとに開発した学習システムである。

■キーワードを抜き出して20字に集約する

このシステムは3つのステップで成り立っている。「初伝」は、学んだことをいつまでも覚えておくためのインプット方法だ。次の「中伝」は、それをさらに理解し実践するためのアウトプットの技術。最後の「奥伝」では、記憶し理解し実践した結果を「自己完結」や「自己満足」に終わらせないための思考法が読者に示される。「学び」を深めることで、仕事が本来目指すべき「他者貢献」を実現してほしい、というのが著者のメッセージだ。

この3段階すべてに共通する学び方が「20字まとめ」なのだ。本などから知識をインプットする段階でのやり方を説明しよう。まず本を読む目的を決める。ある個人事業家が事業を継続・拡大するための戦略を学ぶというケースなら、目的を「戦略の本質をつかむため」と設定して紙に記入する。次にこの目的を念頭に本を読んでいく。

読み終わったら、目的に沿った重要なキーワードを本から抜粋する。キーワードの記入枠は16個。このキーワードが「20字まとめ」の素材になる。さらにキーワード同士の共通項を探したり、言い換えたりしながら、最終的にキーワードを20字前後に集約していく。この事例では次のようにまとまった。

「戦略とは、高価格でも買ってもらえる仕組みづくり」(23字)

■わかりやすいアウトプットのための3つの疑問詞

アウトプットの段階のフレームワークとしては「"3Q"アウトプット学習法」を取り上げている。3Qとは3つの疑問詞、「what?(何を)」「why?(なぜ)」「how?(どのように)」のこと。著者によると、人間はこの3Qが解消したときに「わかった」と感じるそうだ。あらかじめこの3方向に思考を整理しておくことで、他者に「?」を感じさせない説明が可能になる。

例えば、セミナーなどで得た学びを他人に伝えたいときは、「何を学んだのか」「なぜ学びたいのか」「今後にどう活かしたいのか」の観点で、考えをまとめていく。この学習法の場合、それぞれの疑問について答えを記入するフレームは3個だ。つまり1つのテーマにつき、9つのトピックが見つかるので、そのトピックをもとに説明を構築していけばよい。

著者の提唱するこのシステムは、枠組みの中に言葉を収めることでおのずと思考整理が進んでいくのがミソだ。思考整理を続けていけば物事の「本質」へたどり着く。情報の整理や他者への説明が苦手だと思い込んでいる方は、ぜひチャレンジしていただきたい。

今回の評者=安藤奈々
情報工場エディター。8万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。早大卒。

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