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質・多様性・ネットワーク・チャレンジ~AI時代を生き抜く4つのキーワード AIの未来(7)

人工知能研究会/AIR

2019/2/28

こんにちは、東京大学大学院の兼平篤志です。これまで2回に渡り、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)のComputer Vision Laboratory(CVL)と、中国・北京にあるMicrosoftResearch Asia(MSRA)のMultimedia Search and Mining Groupにインターン生として在籍した際の、私自身の経験や感じたことをITや人工知能(AI)という視点から雑多に書いてきました。

留学を通しての学び

学会で発表

その中で、自分にとって特に重要な気づきとして感じたことは「量より質」「多様性」「ネットワーク」「チャレンジ精神」の4つのキーワードにまとめられます。

AI関連の技術は応用範囲が非常に幅広いため、多くの国や企業が取り組んでおり、競争がとても激しい分野です。技術の進歩が速いため、既存の方法がすぐ古くなって過去のものになり、多くの知識があること自体はあまり重要ではなくなってきているように感じます。そのような量的なものではなく、むしろ問題の本質を見極め解決する能力であったり、既存のものから一歩踏み込んで新しい価値を産み出す能力のような、質的な変化をもたらす力を培うことが重要だということに留学を通して気付かされました。

更に、そのような質的な変化をもたらすようなアイデアは、必ずしも何も無いところから産まれるという訳ではなく、異なる複数のアイデアが融合されたり、既存のものを別の視点から見ることによって産まれることが多いという事を学びました。そのような異なる視点からアイデアを得るためには専門や得手不得手、言語、文化などを含めた多様なバックグラウンドを持つ人を理解し協調していくことが必要で、そういった多くの人と繋がりを持つことが重要となってくるという事を学びました。そして何よりも、やってみないと分からない事に対して、粘り強くチャレンジしていくことの重要さを感じました。

私が留学やインターンをした最も大きな動機は、研究において重要な"新しい事をするための方法論"を学びたかったからでした。普段の生活とは全く異なる環境の中で自分が身を持って体感したものは、研究だけはでなく、研究以外の他の事にも重要であり、自分の将来にも活かしていけるだろうと思っています。

人間と機械の協調が重要に

スイス連邦工科大学チューリッヒ校

特にdeep learning(深層学習)と呼ばれる技術の発展によって、ここ数年でAI分野の技術は急速に進展しました。実際、例えば画像の中に写っている物体("猫"など)を認識するのは、AIが人間よりも正確に答えることができるようになり、最近ではAIが囲碁のプロ棋士を破ったという事もありました。AI技術そのものはとても汎用的で、自動運転や医療をはじめとして幅広い応用先があるため、多くの国や企業がこの分野に注力し、技術は加速度的に進歩しているように思われます。

このような急速な発展を危惧して、「AIによって人間の仕事が奪われるでは?」といった話も見受けられます。しかし、現状のAIは同じ環境で同じことをするのはとても得意ですが、未知の状況や、やったことのない事に対応するのはまだまだ時間がかかります。また人間のように全く新しい物事を一から創造することもできません。一般的に想像される「ドラえもん」のようなAIとは程遠いのが現状です。むしろ、自動車やインターネットのように人間の能力を拡張するも

の、というのが正しい見方だと思います。

そのため、いかにして人と機械が協調していくかを考えることは非常に重要だと思います。自動車やインターネットがそうであったように、機械が得意な部分は機械に任せ、機械にはできず人が得意な部分は人が行うといった具合に、お互いがそれぞれの能力を補い合うことで、これまでに出来なかったことができるようになるでしょう。そのためには、人、機械の双方がお互いに歩み寄ることが重要だと考えます。

万里の長城で友人と

最近ではAIを人間側に近づけたるめの試みもなされています。一つの例として、AIがなす予測を説明する方法の研究などがあります。近年のAIの主流技術であるdeep learningはその内部はとても複雑で、予測の過程は人が理解できるものではありません。人工知能を用いた応用(例えば、医療画像から病気を予測するAI)では、多くの場合予測を行うのはAIですが、最終的に重要な決定を下すのは人(医者)になると考えられ、機械の判断の根拠を理解できないのは大きな問題です。そのため、"なぜそのような決定を行ったのか"という根拠を人が理解可能な形で説明する試みがなされています。また、人よりも"賢く"なったAIが(例えば、碁を打つAI)説明として人にフィードバックすることで、逆に人間が"賢く"なったり、スキルを取得することなども考えられるでしょう。(*そのような研究の一例として、著者らが行ったものがあります。https://arxiv.org/abs/1812.01280 , https://arxiv.org/abs/1812.01263

人間の創造力がより必要とされる時代に

一方で、人が機械に歩み寄ることも重要となってくると思います。 AIの技術自体を使うことだけを考えるなら障壁はほとんどなく、(ある程度の知識があれば)誰でも使えるようなものになってきています。実際、ほとんど全ての情報はインターネットで見つけることができますし、多くのプログラムはオープンソースとして公開されており、無料でダウンロードすることが可能です。しかし、上で述べたように、機械は単一の閉ざされた環境で何かをするのは得意ですが、人間のような創造性はなく、人がどう使うかによって良くも悪くもなります。AIによって私達の生活を良い方向に変化させるためには、AIに対する正しい理解が必要です。その上で、技術をどのように用いるかを考える必要があり、これには人間の創造力がこれまで以上に不可欠となってくるのだろうと思います。

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