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ひらめきブックレビュー

がんも糖尿病も「慢性炎症」から 予防に5つの習慣 『免疫と「病」の科学』

2019/2/14

転んで膝をすりむいたり、皮膚にできものができると、その部分が赤くなったり、熱をもったりする。これが「炎症」という現象である。炎症自体は異物から身体を守る免疫機能の一部であり、正常な反応だ。そして一過性であるのが普通である。ところが、これが慢性化して「慢性炎症」になると、非常にやっかいなことになるという。

本書『免疫と「病」の科学』は、炎症と病気の意外な関係を、最新の免疫学の知見をもとに解き明かす一冊だ。

■動脈硬化、アトピー性皮膚炎、ぜんそくなどに関与

すぐに治まるはずの炎症が、治まらないという“例外的な”炎症が慢性炎症だ。例えば動脈硬化、アトピー性皮膚炎、ぜんそくなどは、それぞれ動脈の壁、皮膚、気道の壁で、慢性炎症が続いている状態だ。そして、慢性炎症は全身に広がり、炎症が起きた組織の機能を低下させる。しかも、赤くならない、あるいは熱を持たない場合もあり、気づかぬうちに症状が進むことも多い。そのため「サイレント・キラー」などと呼ばれている。

慢性炎症の正体はいまだによくわかっておらず、あいまいで捉えづらい。慢性化の要因としては、炎症を促進させる体内物質の異変等で「炎症のアクセルが踏みっぱなしになっている」こと、あるいは制御性T細胞など、炎症を抑える「ブレーキ役」が効きにくくなっていることが考えられる。

慢性炎症は様々な病気の発症に関与している。その範囲は、がん、肥満、糖尿病、脂質異常症、心筋梗塞、肝炎・肝硬変、関節リウマチ、認知症、うつ病にまで及ぶ。老化が進行し、寿命が縮まるという研究結果もあるという。まさに慢性炎症は「万病のもと」なのである。

■ストレスがかかると免疫機能が抑制される

現代の医学では、慢性炎症そのものを治癒する特効薬は存在しない。そのため、しっかりと予防をすることが大事になってくる。

炎症の慢性化を防ぐために必要なのは、日々の健康習慣の改善である。具体的に本書が提案するのは、「避けられるストレスを避ける」こと。ストレスがかかったときに分泌される副腎皮質ホルモンは、免疫機能を抑制し、炎症の慢性化に結びつきやすいからだ。

次に「禁煙する」「節酒する」「食生活を見直す」「身体を動かす」「適正体重を維持する」という、5つの健康習慣を実践することが挙げられる。具体的には、節酒なら毎日飲む人でビール大瓶1本程度、運動なら年齢にもよるが「歩行と同じくらいの身体活動を毎日60分」プラス「息がはずみ汗をかく程度の運動を毎週60分」程度が適当とされている。

いずれにせよ大事なのは、何事も「ほどほど」であること。「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如(ごと)し」。それこそが慢性炎症の予防法であり、すなわち万病に効く究極の健康法なのだ。

今回の評者=江藤八郎
情報工場エディター。障害者福祉の仕事の傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」エディティング・チームも兼ねる。ブログ「福祉読書365」管理人。東京都出身。

免疫と「病」の科学 万病のもと「慢性炎症」とは何か (ブルーバックス)

著者 : 宮坂 昌之, 定岡 恵
出版 : 講談社
価格 : 1,188円 (税込み)

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