訪ねてみたい文人ゆかりの地
何でもランキング
面影漂い 作品味わい深く
行楽の春、自分の好きな作家や作品のゆかりの地を巡り、のんびりと散策してみてはいかがだろうか。中でも近代以降の文人たちは顔ぶれが多彩で、残した作品や資料が豊富にそろう。生家や旧居などが保存されているケースもあり、見どころが多い。専門家に訪ねてみたい文人ゆかりの地を選んでもらった。
小説や詩など、ランキングに並んだ文人たちのジャンルは様々で、活躍した時代も明治から第2次大戦後までと幅広い。出生地を中心に選ばれたゆかりの地も、全国各地に散らばっている。
1位の五所川原市と2位の花巻市は、太宰治と宮沢賢治という今も新しい読者を獲得し続ける東北を代表する作家の出生地だ。2人とも熱心なファンが多く、人となりや作品に大きな影響を与えた故郷を訪ねる人が後を絶たない。
太宰は繊細な感性と人間の弱さが漂う作風が、時代を超えて悩み多き若者世代の共感を呼ぶ。岩手県生まれの賢治は東日本大震災の復興のシンボルとしても注目を集め、「雨ニモマケズ」などの詩が被災者を勇気づけ、今を生き抜く力ともなっている。
多くの文人を輩出し、文学的土壌の豊かさを感じられる地も目立った。3位の松山市と4位の金沢市は文化を大切にする土地柄で知られ、記念館なども数多く整備されている。
お目当ての作家以外の施設も巡ってみれば、新たな出合いがあるかもしれない。どちらも歴史のある城下町で城や建物などの名所旧跡が多く、観光旅行の合間にゆかりの地を訪ねることもできる。
今回ランキングされた文人たちは既にこの世に亡く、新作を生み出すことはない。だが、作家の面影が今も残る場所を訪ねることで、作品の味わいはより深まっていくことだろう。お気に入りの文庫本をバッグに入れて、旅に出てみるのも面白い。
京都・宇治、源氏物語にどっぷり
平安や江戸時代に活躍した文人ゆかりの地もある。京都府宇治市の源氏物語ミュージアムは、平安時代の華やかな宮中を映像や模型で紹介、源氏物語の世界にどっぷりつかることができる。「周辺に宇治十帖の紹介碑が点在し、たどれば紫式部の像が立つ宇治橋や対岸の平等院鳳凰堂にも行ける」(選者の横井三保さん)
「奥の細道」で知られる俳人の松尾芭蕉が生まれた三重県伊賀市には、芭蕉翁記念館や生家など関連施設が多い。同県松阪市には、古事記や源氏物語の研究で名高い本居宣長の記念館もある。
調査の方法 全国各地の記念館や旧居など観光施設がある近代以降の文人(物故者)ゆかりの地の候補46カ所をリストアップ。資料・展示品の充実度や観光地としての魅力などの観点から、訪ねてみたい地を評価してもらった。選者は次の通り(敬称略、五十音順)
秋山稔(金沢学院大学教授)▽芦沢恵(JTB広報室)▽紅野謙介(日本大学教授)▽富岡幸一郎(文芸評論家)▽中石貴大(日本旅行赤い風船事業部)▽永井康友(田端文士村記念館研究員)▽深田布士夫(近畿日本ツーリスト国内旅行部)▽堀越正光(「東京『探見』―現役高校教師が案内する東京文学散歩―」著者)▽矢島裕紀彦(ノンフィクション作家)▽横井三保(大阪文学振興会事務局長)
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