ライフコラム

梶原しげるの「しゃべりテク」

古民家移住の案内人 夫の故郷・甲州で受け入れを支援

2018/12/27

■都市部から見学・体験ツアー

住まいが定まると、のんびりするいとまも惜しんで、翠さんは旅行会社時代の経験を活かし、東京や神奈川在住の人達に向け、「田舎暮らし体験ツアー」の事業を立ち上げた。旅行会社時代から社の内外から有志を集め、「体感型ツアー」の研究はすでに始めていたらしい。

こんな彼女の「人集めスキル」はその後の田舎暮らしに大いに役立った。古民家鑑定士の資格を取得したのもこの頃だ。ところで「古民家鑑定士」とは何か?

資格試験を実施する一般財団法人職業技能振興会のホームページにはこう記されている(大意、抜粋)。

「残すべき築50年以上の伝統工法の古民家並びに在来工法の木造住宅を実際に鑑定し、耐久性や希少性、文化的な住環境の保存などの総合的な判断基準に基づき古民家鑑定書を発行し、このような築50年以上経った古民家に対して新たな価値の創造をおこない、ユーザーに提案していくことを業とする」

ツアーに参加する都会の人の中には「大人の野良遊び体験」と同じぐらいの人数で「古民家暮らし体験」を楽しむ人がいた。体験だけでなく、実際に「自分も古民家に住みたい」「できれば購入したい」という人が思った以上に多かった。

「移住するなら古民家で暮らしたい」

「創作活動のアトリエとして使いたい」

「古民家カフェを開きたい」

「訪日外国人向けの民泊を古民家で始めたい」

30歳代から40歳代のデザイナーやカメラマンなどクリエーターを中心に大きな反響があった。東京に勤務するサラリーマンにも古民家に住みたいという人がいた。

「電車で東京まで1時間半じゃないですか。往復じっくり読書もできる。簡単な仕事ならネットでできる。土日は翠さんに紹介してもらった地元の若いクリエーターの皆さんと、何か新しいことができそうな気がするんです!」

期待以上の「古民家需要」に驚いた翠さん。そんなニーズに応えるため、着々と準備を進めた。

■移住を望む都市住民をサポート

「古民家を手に入れたい」という願いに応じるべく、不動産業の義父、それを引き継ぐ税理士で宅建士の夫に加え、購入したお客様がリフォームするなど新たなニーズに応えるため、イベントを通じお友達になった坂野由美子一級建築士にも加わってもらった。万全の体制を組んで、購入希望のお客様のため、古民家を譲ってもらうための交渉をスタートさせたのだが、これは少々てこずったらしい。たとえばこんな感じだ。

「お宅様のおうちの隣にある、素晴らしく立派で伝統的な古民家に興味を持った私どものお客様がいらっしゃるんですが、あれはどなたがお持ちの物でしょうか?」

持ち主「私んとこだけど、もう何十年もほったらかして、雨ざらし、風ざらし、元の家の色がわかんないほどすすけて、しょうがないから物置にしとるもんでねえ。これにどういうこんで興味もつだね?」

「古屋を古民家として再建する」というアイデアに、地元の皆さんからすぐに賛同してもらえるというわけにはいかなかったらしい。ご先祖様から残された「巨大な古屋」に手を焼く地元の人は結構いらっしゃって、大枚払って処分するお宅も少なくなかったようだ。

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