本当に老後を楽しめるか 「遊びの予習」で下準備を

旅を楽しむにも「経験」が大事

佐藤「異文化体験をエンジョイするというより『豊かな老後ライフを過ごしている私たちの証拠写真撮影』が旅の目的なのかもしれないとさえ思います。フェイスブックやラインにあげる方も結構いらっしゃいます」

梶原「若い連中が出された料理を食べるより料理の写真を撮り、インスタグラムにあげて、『リア充(=リアルな生活の充実)』自慢するのと変わりない?」

佐藤「そういうことです。旅そのものを楽しむには、若い日に旅の面白さを体中で感じ取りかみしめた体験なしで、いきなリ『楽しんでください』といっても無理なんです。遊びでも、楽しむにはそれなりの修行が必要であり、カネさえあれば何とでもなるというわけではないと知りました」

梶原「その話を聞いて、うちの両親を思い出しました。戦後の苦しい時代、僕ら3人の子供たちを育て上げ、定年退職するまでは倹約家で、旅を楽しむ余裕なんて多分なかった。それを反省したのか、退職後は『今後は母さんと日本中を旅して回る』と宣言して、実際、まああちこち行っていました。ところが、旅の土産をもらいついでに実家に顔を出すと、『旅もいいけど、うちがやっぱり一番だなあ』なんてつぶやいていた。節約して、我慢して、老後の蓄えを十分にして、旅を楽しむ決心をしたのに、本当はあまり楽しめていなかったのかなあ」

佐藤「うちの両親も堅実な節約人生の人でした。父の退職後、私が『たまには僕のおごりでおいしいものを食べに行こうよ』と誘っても、そういう場所に慣れていないから『もったいないなあ』『贅沢すぎはしないか』なんてことばっかり言って、結局、楽しめない。若いうちからある程度、趣味や遊興費に投資しておかないと、いざお金がたまっても、上手に使えないんです」

梶原「そういうことか」

老後を楽しむ「訓練」の必要性

佐藤「観劇も同じです。歌舞伎座で舞台に近いいい席なんてめったに取れませんよね。そういう席で居眠りしている、年配の男性を見ることがあります」

梶原「もったいない」

佐藤「僕なんか若いころ、一番後ろの、役者さんが豆粒ぐらいにしか見えない席で見たものです。いつかは顔がはっきり分かる席で観劇したいものだと夢見て通いました。そういう『若き日の投資』があったからこそ、50歳を過ぎた今、ごくまれにいい席が取れた日は、まばたきするのさえ惜しむような気持ちで舞台に没頭し、感動できるんだと思います。こういう楽しみ方は、いくら老後の資金が潤沢でも(若いうちに経験しておかないと)できないんですよね」

「老後の資金」も不安だが、「自分は節約を言い訳に、老後を楽しむ訓練を怠ってきたのではないか?」という、別の「不安系」のおじさんも結構、いそうだ。

※「梶原しげるの「しゃべりテク」」は毎月第2、4木曜更新です。次回は2018年10月25日の予定です。

梶原しげる
1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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