AbemaTVはどこがすごいのか 予測不能感を最優先

加藤浩次さんの司会者らしからぬ振る舞い

陸上トラックをぐるぐるひたすら何十周も走り、ライバルたちがギブアップしていなくなるのを辛抱強く待つのか? いつ果てるとも知れぬ「周回地獄」を逃れる唯一の手段と言える、途中で出された課題にチャレンジして脱出するのか? この究極の駆け引きを迫ったゲームでのことだった。

梶原「制作側にすれば、参加者の『どっちが得か?』の選択で、思い悩む心理的な葛藤、ゲームで勝ち抜けた晴れやかな笑顔、失敗の嗚咽(おえつ)といったドラマチックな場面が目に浮かびますか?」

濱崎賢一プロデューサー「もちろんそれも狙いです」

梶原「ところが、加藤さんは途中からそういう制作の意図を完璧に無視して『迷うな! チャレンジに成功する確率はせいぜい5割。逆に言えば失敗が5割だ。そんな失敗率の高いものに賭けてどうする。俺なら走り続ける。チャレンジで脱落する連中が出るのを、俺なら待つぞー!』って」

古賀「確かに、あそこから課題にチャレンジする人がいなくなって、我々からすると、『見せ場』がこのままなくなるんじゃないかって、ドキドキしました。でも、しばらくすると、終わりの見えない走りに耐えきれなくなった参加者が一気にチャレンジコーナーに走り込むシーンなど、心理戦の妙を伝えることになりました。加藤さんの『制作者に忖度(そんたく)しない姿勢』こそが、リアルカイジのリアリティーショーの部分を結果として一番うまく引き出していました」(結局、走りでクリアした人は5時間半以上も走った)。

予定調和を拒絶する「空気を読まない」番組づくり

濱崎「地上波から出向した僕が言うのも何ですが、地上波では制作側も、出演者、たとえば芸人さんたちも『この場はこういう感じにしたいんだろうな』と、無意識で忖度し合うというか、空気を読み合い、失敗しないようにする傾向があります。AbemaTVは、そういう考え方はやめようぜって、我々現場も、(藤田晋)社長もそういうテンションで一致していて、あれこれ意味のない配慮、忖度はやめにして、リアルに行こうよって。それが必ずしも面白くなるかどうかは分かりませんが、予定調和に収めていくことはしないって考えです」

古賀「私たちの企画会議では『予測不能感』を大事にしています。僕ら制作者がこの企画の先が予測不能、どうなるかわかんないって状況でものを作らないと、新しいアイデアを生んだり、視聴者の深層に触れる興味を描いたりできない。亀田シリーズ(プロボクサーの元世界王者、亀田興毅に勝ったら1000万円など)も予測不能感を前提にしないと生まれなかったと思っています」

梶原「地上波では予測不能感たっぷりの企画ってどうですか?」

濱崎「多分、通らないでしょうね。どうなるか分からない、説明できない話を、(テレビ局内の)営業担当者、広告代理店、スポンサーにするって、あり得ないんじゃないかなあ。『で、どうなるの?』『予測不能です』はだめでしょうね。地上波の場合、これぐらいのお金をかけたら、この程度の数字(=視聴率)が出て、これぐらいのリターンがあってって求められます。当然と言えば当然ですが」

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