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梶原しげるの「しゃべりテク」

農家の「軽く一杯」はお泊まり、転職移住の思わぬ現実

2018/5/24

農業の自然な生活サイクルを心地よく感じる人もいる。写真はイメージ=PIXTA

渡辺真人さん(仮名、45歳、独身)は5年前に東京都内から山梨県に移住し、ある農業生産法人で働いている。大学を卒業した1995年は、いわゆる「就職氷河期」の真っただ中だった。

堅実な公務員家庭に育ち、都内のそこそこの大学を出た自分は、そこそこの企業に入社して、そこそこの人生を送れるものだと甘く考えていたが、全くの当て外れ。かろうじて採用されたアパレル関係の会社は業績が振るわなかったのに加え、相性も合わず退社した(後日、会社は倒産)。

次に就いたのは、某広告代理店の営業職。テレアポ(テレホンアポイントメント)、飛び込み営業など過酷なノルマを負わされたが、仲間との競争を何とかしのいでいた。

しかし、40代にさしかかるころには、さすがに勝ち続ける自信がなくなった。「追い込まれた彼」を心配した知人が「気晴らしになれば」と、関東近郊での週末農作業のボランティアを勧めてくれた。これがハマった。

広告代理店の営業目標は週単位でクリアしなければならない。1年に50回も成果を問われ続ける。

■農業で出会った年1回サイクル

一方、農業は年1回の収穫に向かって作業する。営業よりはるかに長いスパン、大きなサイクルで過ごせる。

「こういう穏やかな世界もあるんだ」

気疲れ、人疲れに「しんどさ」を感じていた彼にはとても新鮮だった。

「ひょっとしたら農業こそが自分の天職だったのかもしれない」

独り身という身軽さもあり、「移住・就農」を視野に入れて、それまで以上に熱心に様々な農業の現場に出掛け、汗を流すようになった。

とはいえ「東京者」にとって、農家での作業は身体的には想像以上にハードだった。

渡辺「農家の人は淡々と黙々と働く。僕より体力、持久力のあるおじいちゃん、おばあちゃんがいっぱいいます。『こんな自分にやっていけるのか?』と思ったとき、初めて農業生産法人の存在を知りました」

■移住先自治体が就農を支援

移住を促進する地方公共団体では、様々な方法で就農希望者に職場をあっせんしている。

渡辺「紹介された法人の代表が私の営業経験も評価してくれたので、今では流通、拡販、イベントまで、いろいろな場面で働かせていただいています」

誰がどうやって作ったか詳しく知らない商品をひたすら売り込むだけの営業とは違い、自ら作った農産物や、それを原料とする加工品を販売する、ほぼ全ての行程に関われる仕事はやりがいもひとしおだそうだ。

梶原「農業移住はいいことだらけ?」

渡辺「そうとも言えません」

梶原「ほお」

渡辺「今は地方の行政が移住者に対し、医療、子育てなどの面倒を手厚く見てくれます。安価な住宅提供も珍しくないです」

梶原「『移住』で検索すると、ものすごい数の地方自治体が、移住のメリットをアピールしていますね」

渡辺「ところが、実際には、思わぬことが理由になって移住に挫折する人がいる。しかも、そのことを、行政のホームページなどで知ることのできるケースは、まずありません」

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