実は日本語エリート? 外国人コンビニ店員がすごい

コンビニでは食べ物の注文や宅配便取り扱いで店員と言葉を交わす機会が少なくない。写真はイメージ=PIXTA
コンビニでは食べ物の注文や宅配便取り扱いで店員と言葉を交わす機会が少なくない。写真はイメージ=PIXTA

近所のコンビニエンスストアの店員さんが胸につけている名札。数年前までは「ハンさん」「ホンさん」「テイさん」「ギョウさん」といった、韓国・中国系と思われる名前が多かったが、近ごろは「サリムさん」「チャドさん」など、西アジア系だろうかと思える名前が目立って増えた感じだ。

いまさら言うまでもないが、「外国から来た店員さんゆえに不便を感じた」なんて経験はない。

私はカラーコピーをとるとき、しばしばコンビニのお世話になるが、何度やっても「拡大」「縮小」など、誰でもできるようなことでに失敗し、しょんぼりしていると大抵、彼らが「どうしました?」と助けてくれる。

宅配便を利用する際、郵便番号を書き忘れたりすると、「郵便番号をお調べしますか?」と、中東系とおぼしき「ラウルさん」が笑顔で声を掛けてくれたりする。

コンビニで働くための日本語能力

こんな話を、先日、某勉強会で知り合った、日本語学校に勤める堀みどりさん(学校法人東京ギャラクシー日本語学校)にしたら、彼女はニッコリ笑い、「それはね……」と言って説明してくれた。

「一部の例外を除けば、来日外国人がコンビニで働くためには日本語能力試験(国際交流基金などが主催する、日本語を母国語としない人のためのテスト)で最も難しいN1のワンランク下にあたるN2合格程度の日本語力が必要だとされているんです」

梶原「Nって何ですか?」

「日本語のNです。最難関のN1から初心者のN5まで5段階に分けられます」

梶原「N2って、上から2番目。レベル高いですねえ」

「はい、N2は、具体的には『敬語を含め場面に応じたコミュニケーション』や『抽象的なことの説明ができる日本語レベル』とされています。コンビニの人は、劇場予約の端末操作の方法とか、パパッと教えてくれますよね」

梶原「そう言えば、やってますね!」

堀「電気代などの公共料金支払いから税金の納付までスムーズに処理してくれますでしょ? コンビニ振込用紙は原則として現金支払いだけですが、コンビニによってはそのチェーン独自のカードを使えば払える場合もある。その場合にはリボ払いになる、なんていう、複雑な説明もする必要がありますね」

梶原「ひえ! そんな対応、私の日本語力では到底無理だ」

日本での語学上達ペース

考えてみれば、食品、雑貨から金融サービスに至るまで、何でも取り扱わせなければならない「コンビニ」を切り盛りする店員さんのコミュニケーション能力は相当なものだった。「外国から来たばかりなので、そのあたりは大目に見てください」と甘ったれることは許されない。

「母国であらかじめ学習してくる学生さんもいますが、一般的には1年9カ月にわたって学校に通い(もっと短い速習クラスもあるらしいが)、N5(日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる)からスタートし、N1(幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる)を目指します」

取材時にお邪魔した堀さんの学校のロビー掲示板には、東京大学をはじめとする「名門校」の大学、大学院に合格した卒業生の名前がズラリと並んでいた。

梶原「え! 小学生レベルの日本語を2年足らずで大学院生レベルまで引き上げる?」

「ですから教える側も教わる側もすごい集中力が必要とされます。決まりでは1日4時間以内のアルバイトは許されますが、予習、復習でそれどころではないという生徒も当然います」

梶原「でも、むしろバイト先で生の日本語でもまれたほうが学習効果が上がるという考えもあるのでは?」

「ありです! でも、バイトとはいえ、N5レベルの日本語だと会話の機会が少ない清掃関係、N4では数人で淡々と行う袋詰め関係などになりがちで、会話場面が限られます」

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