資格取得者の不幸な勘違い 「士」はおまけに使おう
公認会計士が会計以外も幅広くコンサルティングできれば、さらに頼られる存在に。 写真はイメージ=PIXTA
私は「無職」で大学を卒業しました。今から30年ほど前、景気はよかったのですが、親は「どうして就職しないんだ」と嘆いていました。しかたがありません。その当時、私は公認会計士の試験を受験勉強中だったからです。大学4年で受けた初回の受験は落ちましたが、「来年はたぶん大丈夫だろう」という根拠のない自信もあり、そのまま就職活動をせずに卒業して夏の試験に向かったのです。
結果は運よく合格できました。私がうれしかったのは当然ですが、「この先どうなるのだろう?」と息子を心配した両親のほうが喜んでいました。ふだんは無口な父親から電話で言われた「よくやった、おめでとう」というやさしい言葉は今でも忘れられません。
そのとき、私も父親もわかっていなかったのです。「大変なのは合格のあと」ということが。
最初どこかに勤めるにしても、いつかは独り立ちしたい――。そんなことを思い描いていました。しかし、公認会計士は大きな組織に属して働く人がほとんどであり、独立して成功している先輩は少数だったのです。
20歳代はずっと「将来のイメージ」がうまく描けずにもんもんとしていました。その不安を振り払うべく外資系に入って死に物狂いで働いたのですが、運の悪いことに働きすぎで身体を壊してしまいました。胃潰瘍による吐血を繰り返し、数カ月にわたって入院を何度も繰り返す羽目に陥りました。
こうなると職場から「社会人失格」のような目で見られます。それも自業自得です。職場を変え、身体はすこし元気を取り戻しましたが、それでも将来に対する不安感はまったく消えません。やけっぱちのような毎日でしたが、ある日、一筋の光が差し込む「事件」が起こったのです。
「会計士さんですか!」と予想外に驚かれる
そのころ、私は会計ソフトウエアの販売にかかわっていました。ある会社へうかがってソフトのインストールを行っていたときのことです。たまたま会社の「会計データ」を更新する作業を行っているとき、その会計データの異常に気が付きました。