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ランドセル売るヒーロー 子供の目線で売り上げ倍増 大丸梅田店 木戸口和美さん

2017/11/8

シャツやスカーフ、時計や靴まで「赤」でそろえたアカランドセルジャー

 大丸松坂屋百貨店が運営する大丸梅田店(大阪市)。ランドセル売り場を訪れる子供たちからダントツの人気を集める販売員がいる。自身で生み出したオリジナルヒーロー、「アカランドセルジャー」に変身する木戸口和美さん(41)だ。

 全身を赤一色でそろえた勇姿は「スーパー戦隊ヒーロー」のリーダーのよう。木戸口さんを取り囲む子供からは「お姉さんの必殺技見せて」と声が掛かる。すかさず仮面ライダーさながらのポーズを木戸口さんがきめれば、子供たちが一斉にまねをする。子供たちの喜々とした様子に一緒に来店した親や祖父母も自然と表情が緩む。

 木戸口さんがアカランドセルジャーに変身するようになったのは5月から。かつて入学準備のための季節商品だったランドセルは年々、商戦の立ち上がりが早まり、いまでは通年販売する小売店も多い。販売競争が厳しさを増すなか、ランドセル売り場での10年間の経験を踏まえ、売り場の盛り上げ役を買って出た。

 本来は売り場の主役となるはずの子供たち。しかし、親や祖父母が品定めのために販売員と話し込むようになれば、手持ち無沙汰になる。ここ数年、ランドセルの色や柄に加え、素材や機能も多様になり、子供にとっての待ち時間は長くなる傾向にある。

 子供たちに楽しんでもらうため、ヒーローになると決めた木戸口さんはその装いから徹底的にこだわった。

 身につけるシャツや時計、靴は赤で統一。伝票などに書き込むペンなどの文具も赤でそろえ、赤いスカーフやポーチ、社員証入れは自作した。子供と接するときは必ず、フレームが星形の赤いサングラスをかけ、目線が同じ高さになるようにしゃがみ込む。

 恥ずかしがり屋の子供との距離を一気に縮める秘策は自身の写真が入ったお手製のカードだ。市販のトレーディングカードにならって、レベルやパラメーターを記したカード。「得意技=早寝早起き」といった入学までに身につけたい生活習慣なども書き込んだ。

 「店員さん、強いヒーローだったんだ」。こんな言葉が返ってくれば、そこから会話が広がる。「大人が名刺を渡すのと同じ。子供に楽しんでもらえるものをあげたかった」。木戸口さんはカードをつくった狙いをこう話す。アカランドセルジャーの登場から3カ月、木戸口さんのカードを握り、再び売り場を訪れる子供もいるという。

 5~6月のランドセルの受注は前年同期の2倍とヒーロー効果で売れ行きは好調だ。想定以上の人気を集めた木戸口さんの変身は8月いっぱいの予定が通年実施の売り場の目玉企画となった。

 大丸梅田店があるJR大阪駅前は競合店も集積する激戦区。ランドセル商戦が一段と熱を帯びていくなか、木戸口さんは「買い物をするだけでなく、楽しんでもらえるような接客を心掛けたい」と意気込む。

 「大人からも本気で笑いを取るくらい、恥ずかしがらずにポーズを決めている」という木戸口さん。「あそこのお店面白かったよ」という口コミが大人の間に広まっていく。アカランドセルジャーとしての奮闘がそんな未来につながると期待している。

(荒尾智洋)

[日経MJ2017年8月14日付]

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