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九州旅客鉄道(JR九州)の唐池恒二(からいけ・こうじ)会長の「仕事人秘録」。第8回は本業の鉄道事業をもり立てた営業部長時代について語ります。

――15年ぶりに鉄道に絡む仕事に。

外食が黒字経営の軌道に乗ったのを見届けて、2003年6月にJR九州本社に戻ってきました。役職は営業部長。高速船の立ち上げから足かけ15年を経て、ようやく鉄道に絡む仕事に携わることに。ですが、この時、鉄道収入は6年連続で減収。歯止めがかからない厳しい状況でした。

「新・感・動・作戦」を社員に浸透させるために憲章を作った

「新・感・動・作戦」を社員に浸透させるために憲章を作った

着任前に打開策としてサービスの抜本的な見直しが進んでいましたが、前任の丸山康晴さんが「唐池くんが来るから、唐池流を作りましょう」と白紙に戻しました。はとバスのもてなしが先進的と評判を聞けば、東京まで勉強に視察。それまでのたたき台を基に新たな答えを導きました。名付けて「新・感・動・作戦」。

「お客さまの声はすぐに営業施策に反映しよう」。従来は対応まで1~2カ月もずるずる遅れていたことが度々ありました。今後はすべてのお客様の意見は毎週1回ある幹部の意思決定会議で報告。できる施策は2週間以内での反映を徹底させました。自分の意見を聞いてくれていると感激してもらえますから。

サービス力の向上には競争を持ち込むことが効果的。全駅を対象に電話の応対や乗客との接客を覆面モニターで調べて点数化し、3カ月に1回の割合で順位付けをしました。発表の場は全駅長を集めた営業施策会議。駅長は心臓がばくばくですよ。席順は点数が良い順ですから。ベスト10に入った駅長はすぐに駅員に「やったぞ!」と電話で報告。駅員からも大きな拍手と歓声ですよ。逆に評価が低い駅長は後ろの席でがっくり。

次は少しでも順位を上げたいから、低い点数の駅は上位の駅を全員で見に行く。学び合う風土ができて一気に良くなり、なんとその年は7年ぶりに鉄道収入がプラスに。競争が感動を呼び、お客さまも喜ぶ。まさに新・感・動・作戦です。

――県までも競争に巻き込んだ。

04年3月、九州新幹線の新八代(熊本県)と鹿児島中央駅(鹿児島県)間の部分開業を無事に乗り切った後、さらに一案を練りました。日本の祭で最も面白いのは山笠。7つの流(ながれ)が山車を運んで5キロメートルを競うのは真剣味があり興奮する。「競争を観光地にも取り入れられないだろうか」

ひらめいたのがVS(バーサス)キャンペーン。最初の対戦相手は鹿児島県と大分県。「黒豚を食べに行きますか、フグがいいですか」といった風に、テーマごとに互いの代表が挑戦。どっちと聞かれれば、今回は鹿児島に行ってみようかとつい応援したくなるのが人間です。受け入れ地も負けないように意地になっておもてなしを磨き合う。競争は良いことずくめなのです。

「強運の男ですね」。よくこう言われてきました。外食は実力で黒字にしましたが、営業部長になった年に鉄道収入が上回るなど、私も運がついているなと感じますね。その強運ぶりから、思わぬ案件が舞い込んで来たのです。

[日経産業新聞2016年4月22日付]

仕事人秘録セレクションは金曜更新です。次回は2017年10月27日の予定です。

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