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梶原しげるの「しゃべりテク」

不倫たたきが続く理由 とがめるトーンに変化?

2017/10/12

不倫に関するゴシップ報道はもはや珍しくなくなった PIXTA

 今年もあっという間に10月半ば。某テレビ番組の収録で早くも「あけましておめでとうございます」と2018年のごあいさつを収録してしまった私は今年を振り返ろうと、「2017年 話題」と検索して驚いた。

 トランプ現象、北朝鮮、都知事選、国会解散など、国内外の重大ニュースが次々表示される一方で、目立ったのが、前年の余韻を引きずった「ゲス不倫」のうねりの加速だった。「2017年は不倫騒動の年だった」と後に語り継がれるかもしれないほどだ。なんていう与太話を、居酒屋で昔なじみの友人Aとさしでグダグダと話した。

梶原「不倫なんてさあ、どうでもいい気しない?」

友人A「それは梶原さんの生殖能力が衰えたというか、ひがみが入っていません?」

 Aはかつて大手出版社に勤務。今は退職して、某専門学校で週3日ほど教え、後はぷらぷらしている。ストレートな物言いを嫌う人もいるが、私は彼の言い方が嫌ではない。

梶原「そりゃあ、世界的な俳優とか、税金で雇われる政治家がやらかしたというなら、騒ぐ気持ちは分かるけど、ほらほら、この声優、知ってる? こっちのロックシンガーは?」

友人A「2人とも知らないなあ」

 元出版社とはいっても経理部門が長かった彼は世事に疎いところがある。

梶原「顔も素性も知らない人に『ご迷惑をおかけしてしました』とかいって涙で謝罪されても『こっちは別に、あんたから迷惑受けてないけど?』だよね? それから、こっちの人(iPadを指して熱弁を振るう梶原)、ラッパー界では有名らしいんだけど、ラッパーってのは既存モラルに立ち向かう存在じゃないの? それなのにマスコミ攻勢にあっさり白旗あげてビッグイベント中止だって」

友人A「不倫報道での近年の特徴は、報じられた側の過剰なまでの謝りっぷり。たたかれているときにはひたすら謝らないと炎上する。連中は過去の事例で学習しているから、謝罪も丁寧でしょ?」

梶原「丁寧? まあね。『ご心配をおかけして申し訳ありませんでした』って、謝罪の紋切り型もよく聞けば変だよね。そもそもよほどの身内以外、心配して会見を見ている人はまずいない。『お騒がせしてすいません』とも言ったらしいけど、騒いでいるのはマスコミで、実は騒ぎながら『おかげで部数が伸びてありがとう!』と、むしろ喜んでるんだよね」

友人A「確かに。不倫モノの記事は部数増に直結するから出版社にとっては面白いというよりありがたい。その後追いで飯の食えるテレビ局も数字が取れれば、そりゃあうれしい。うち(かつて籍を置いた出版社)なんかでもそうだけど、テレビ局もいい数字はエレベーター前に張り出すでしょう?思い出すなあ、イケメン国会議員と某キャスターの『路チュー』をスクープしたあのころ」

梶原「10年も前かあ。あのころは『国民の税金で食わせてもらっているのに許せない!』と、青筋立てて全国民が糾弾するというほどでもなく、『議員が路チューはマズいだろう(ニヤニヤ)』という感じで、今に比べれば国民の目ももう少しぬるかった気がするな」

友人A「そこなんですよ! 先輩、ポイントは!」

 彼はまるでゼミの学生を問いただすような調子で語り始めた。

友人A「酒井順子さん(『負け犬の遠吠え』で有名なエッセイスト)が週刊誌に書いていました。昨今の不倫報道は『いじめ』に似ていると。安心して攻撃できるターゲットが見つかると、いじめっ子だけでなく、周囲も加担して、よってたかっていじめ立てる。いじめる側は常に安全地帯に身を置いて、心ゆくまで安心して攻撃を続ける。あたかもそれは正義にかなった行いであるかのように。とまあこれは私の解釈ですが。要するに、我々は今、『不寛容の時代』を生きている!」

記者会見で不倫を謝罪する姿も見飽きた感がある PIXTA

 居酒屋での与太話が、酒井さんの「引用?」でなかなかな説得力を持ち始めた。

友人A「かつて俳優の石田純一さんが『不倫は文化だ』と言い放ってマスコミからたたかれましたよね。『悪いことをしておいて、なんて言いざまだ? 奥さんの身にもなれ!』そういう声も強くありました」

梶原「あったあった。でも、俺なんか、怒りというより、うらやましかったなあ」

友人A「世間の受け止め方は今より多様だったと思うんです。多くがたたく側に回りましたが、一方で『俳優さんだもの、誘惑の一つや二つ、あるわよね』ぐらいに笑って済ます『寛容な人』がまだ何割かはいたような気がします。あの物言いの与える印象が良い悪いは別にして」

梶原「まあ、夫や父親としてのイメージは良くないわな」

友人A「賃金の伸び悩み、格差の広がり、承認されない不満・鬱屈、少子高齢化であすが見えない。そういった不安をため込んだ我々から寛容の精神が薄れ、『いい思いをするヤツは許せない』との感覚ばかりが強まっていったんじゃあないでしょうか」

梶原「なるほど! 『不倫』は字面通り『道に外れている』と皆が認める。ということは、これこそが、ストレス発散に便利な格好の標的?」

友人A「心置きなく皆でたたいてスッキリしたい。誰にも文句を言われない安全な場所から。そういう標的、獲物、言ってみれば『おいしい料理』を提供するのが?」

梶原「?」

友人A「週刊誌!これが第一報。週刊誌のスクープに続いて、我々が『許せない!』と怒ったり、いらだったりする気持ちを上手に受け止め、二次加工するのが?」

梶原「テレビ?」

友人A「商売上手なテレビは正義感まで商品化してくれちゃっているというわけ」

梶原「へええ」

友人A「あ、もうこんな時間だ。この辺でそろそろ」

梶原「きょうはたっぷり勉強させてもらったから、払いはこっちで」

友人A「そうですか? じゃ、お言葉に甘えて」

 気がつけば、友人Aは飲み屋での『雑談の商品化』に成功していたのだった。

※「梶原しげるの『しゃべりテク』」は木曜更新です。

梶原しげる
 1950年生まれ。早稲田大学卒業後、文化放送のアナウンサーに。92年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)。「日本語検定」審議委員。著書に「すべらない敬語」「まずは『ドジな話』をしなさい」など。

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