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不作法な言葉を気にしすぎると、心をすり減らしてしまう PIXTA

不作法な言葉を気にしすぎると、心をすり減らしてしまう PIXTA

心ない言葉や不快な発言には、いつどこで遭遇するかわかりません。私自身、33歳のころ、営業に行った取引先の方に、あれこれ言い寄られて困ったことがありました。

「ご主人が入院していて、寂しい思いをしているんじゃないの?」「軽井沢に別荘があるから、一緒に行こう」

私も若かったので、その言葉に思考も体も固まってしまい、言い返すことができませんでした。

当時と比べて、セクハラやパワハラが社会問題としてクローズアップされた結果、不用意な発言はなくなるのかと思えば、そうともいえません。いまだに心ない言葉や不快な発言をする人はいます。そんな人とは付き合わなければいいだけの話ですが、取引先や上司などが相手では、顔を合わせないわけにはいきません。とはいっても、言われっぱなしでは悔しいですよね。

当時の私は相手を追及する勇気がありませんでしたが、さらっとかわす術を身に着ければ、前向きな解決策になり得るでしょう。セクハラやパワハラ発言の類は無視するのが得策だと思います。失礼なことを言われたら、返事をしないのです。無言を決め込んで「そんなことしか言えないなんて、かわいそうな人」と受け流せばいいでしょう。キッとにらみつけてやりたくなりますが、余計な反応を示すと、相手を喜ばせてしまうだけ損です。あえて聞こえなかったふりをしてもいいでしょう。

「何でそんな失礼なことを言うのですか!」「●●さんは、最低!」などと、怒りをあらわにすれば相手の思うツボです。面白がってさらにひどいことを言ってくる可能性もあります。相手は子どもっぽい振る舞いをしているのですから、同じ土俵に乗ってはいけません。

うそやユーモアで話をはぐらかす

無視はできない、無言なんて無理という人は、人間関係が悪くなることへの心配があるのでしょう。それならば、「えっ? 今なんとおっしゃいましたか?」「もう一度、おっしゃってください」と応じるのもいいでしょう。メモ帳を取り出すしぐさを添えれば、さらに相手をけん制する効果が出ます。しっかり記録されるのを覚悟で、恥ずかしい物言いをもう一度大声で繰り返す度胸のある人はまずいません。

大抵の場合、これで不快な発言はおさまりますが、それでもしつこいようならば、堂々と切り返しましょう。許しがたい発言には「まことに申し訳ございませんが、今のお言葉は不愉快です」「●●のお申し出ならば、謹んでお断りさせていただきます」と、目を見て言えば、それ以上、踏み込んではこないはずです。私は丁寧な物言いを選びつつ、はっきりと拒否や拒絶の意思表示をしています。

うそも方便です。不快な言葉を浴びせられたならば、ユーモアを交えたうそで対応するのも一手です。先の「ご主人が入院していて寂しい思いをしているんじゃないの?」には「せいせいしています。やりたいことができますから」、「軽井沢に別荘があるから行こう」には「本当ですか? お友達を誘っていきますね」などと応じる方法がありそうです。相手の発言に、うそやユーモアで対抗すると、話をはぐらかしたり下心をそいだりする効果が見込めます。

腹を立てて食ってかかると、いさかいに発展しかねない PIXTA

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真正面から取り合わない「かわし、いなし」を覚える

「なぜ結婚しないの?」とプライベートな問題に立ち入ったり、「女性ならば結婚したら、仕事を辞めるのが当然だ」というような言葉を口にしたりする人が残念ながらいまだにいます。「おまえは仕事が遅い」「凡ミスを繰り返す」と、こちらが身に覚えのない決めつけを言い放つ人もいます。

こういう発言に、いちいち腹を立てていたら、身が持ちません。気にしないのが一番です。なぜなら、こうした発言をする人のほとんどは悪気がありません。配慮が足りないまま、無意識に言っているだけなのです。もちろん、無意識だから許されるわけではありませんが、自覚がないだけに、本気で反論しても、事態の好転はあまり望めません。むしろ、自分の価値観でしか物事を見られない「器の小さい人」、大人になってもまともな振る舞いのできない「幼い人」ととらえたら、腹も立ちにくくなるでしょう。

プライベートな問題に踏み込んできたら「私のことを気に留めてくださって、ありがとうございます」とかわす。仕事のミスやスピードを指摘されたら、「どのミスでしょうか? 私、ぼ~としていて記憶がないのですが……」という感じで軽くいなすのもいいでしょう。

気配りの足りない発言に遭遇したならば「怒らない」「無視(聞こえなかったふり)をする」「丁寧な物言いで、はっきりと拒否や拒絶の意思表示をする」「うそやユーモアではぐらかす」「かるくいなす」といった対応が賢明です。要はまじめに取り合わないことです。

そんな物言いをするということは、相手が欠点や未熟さをさらしているのだと、冷ややかにとらえれば、深く気にせずに済みます。不作法な態度を許す必要はありませんが、さらりと受け流す余裕があれば、相手も自分のあやまちに気づくものです。

次回は、後輩を育てるマジックフレーズです。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は9月13日の予定です。

臼井由妃
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫) 公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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