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孫子の「商法」

なぜ二宮金次郎はまきを背負った? 蓄財の商法に学ぶ

2017/8/8

■将帥が陥りやすい5つの危険

そんな二宮金次郎の教えについて、私は孫子の兵法にある「将帥が陥りやすい5つの危険」を思い出します。孫子の兵法にいわく、「故に将に五危有り。必死は殺さるべきなり、必生は虜にさるべきなり、忿速(ふんそく)は侮(あなど)らるべきなり、廉潔は辱しめらるべきなり、愛民は、煩(わずらわ)さるべきなり」。

いたずらに必死になると討ち死にする、助かろうとあがくと捕虜になる、短気で怒りっぽいと敵の術中にはまる、清廉潔白すぎると敵の挑発に乗ってしまう、民衆への思いやりを持ちすぎると神経がまいってしまう、よってこれらには気を付けなさいと孫子先生はいいます。

つまり、戦いにおいては冷静な平常心を保つことが大切であり「行きすぎはいかん」ということ。必死・必生・忿速・廉潔・愛民は、ほどほどにしておかねばなりません。

これに加え、二宮金次郎はビジネスにおいて「欲の出しすぎはいかん」と教えてくれています。欲そのものは肯定されるとしても、どこかで「足るを知る」ことがないと明るい未来がやってきません。

ついつい効率や生産性を「果てしなく」追い求めてしまう私たちには学ぶところが多い言葉ですね。

あ、もしかしたら、「座って読書する」という21世紀の金次郎像は、私たちに「たまには歩みを止めて休みましょう」と教えてくれているのかもしれません。

というわけで、この「孫子の『商法』」連載は今回でひとまず終了です。ご愛読の皆様、どうもありがとうございました! またどこかでお目に掛かりましょう。

参考文献:「尊徳の森」佐々井典比古著、有隣堂/「二宮翁夜話」福住正兄筆記、佐々井信太郎校訂、岩波文庫

「孫子の『商法』」は今回で終わります。

田中靖浩
田中公認会計士事務所所長。1963年三重県出身。早稲田大学商学部卒。「笑いの取れる会計士」としてセミナー講師や執筆を行う一方、落語家・講談師とのコラボイベントも手がける。著書に「良い値決め 悪い値決め」「米軍式 人を動かすマネジメント」など

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