レストランやお土産店がひしめく東京駅・八重洲地下街に話を戻しましょう。ライバルがひしめく激戦区で、いまだ多くの店は品ぞろえや看板の見た目で勝負しています。でも、この付近は店が多く、人通りも多いので、つい視線が泳ぎがちになって、結果的には素通りしてしまうのです。
客を盛り上げる気持ちが働き手も元気にする
「見た目勝負」の正攻法だけで目立つことはたいへん難しい立地。ここでPAPABUBBLEは、「音」による聴覚刺激でお客さんの注目を集めます。さらに飴作りを見せて「うわぁ~」と楽しませる。そんなPAPABUBBLEは孫子的な「奇襲」の使い手といえましょう。
いまや「つくるプロセスを見せる」というオープンキッチン自体は、多くのレストランでも採用されていますが、PAPABUBBLEはその「ひとつ上」を行っているように見えます。
店の飴作りをしばし眺めていると、飴職人さんが「出来たてです、おひとつどうぞ!」と、見物のお客さんに1個渡したり、飴の生地で動物を作ってジャンケンで勝った子どもにプレゼントしたり。ときには誕生日のお客さんに即席の「キャンディー指輪」をプレゼントすることもあるそうです。
音と目の五感刺激だけでなく、それに加えて「楽しそうな雰囲気」をつくっているんです。こうした「お客さんの笑顔」をつくることは、すごく大事だと思います。キッチリした職場をつくるのは簡単でも、楽しそうな職場をつくるのは容易ではありません。
「言われたことをやっているだけ」の職場には元気がありません。これに対して「お客さんをどうやって楽しませようか」とスタッフが考える職場には「勢い」があります。この「勢い」は、本連載「孫子の商法」で最も重要視しているポイントです。
「勢いに求めて人に責めず」
将たる者、やる気やモチベーションを個人に還元して期待するのではなく、組織に自然と勢いが出るよう、もっていかねばならない。
「最近うちの職場に元気がないんだよな」とお嘆きの皆様、PAPABUBBLEに一度行ってみてください。そこにいるお客さん、そしてスタッフの笑顔は参考になると思います。もちろんキャンディーもおいしいですよ。小さなお子さんがいらっしゃる方は、お子さんと一緒にぜひどうぞ。
※「孫子の『商法』」は火曜更新です。次回は2017年8月1日の予定です。
