なぜ思わず笑顔? 孫正義氏の株主総会

企業価値という言葉がはやりだしてからというもの、アメリカの経営者たちはポートレート写真にまで気を配っている様子です。アニュアルレポート(年次報告書)に掲載される写真に、経営者が上着を脱いだワイシャツ姿、あるいはワイシャツの袖をまくった姿をよく見かけるようになりました。

確かにワイシャツ姿の写真からは「頑張って働いています!」という雰囲気が伝わってきます。「汗をかいて働きます。株主の皆様、どうぞ期待してください!」というアピールはそれなりに効果的でしょう。

これに対して、日本社長の多くに見られる「きちっとしたスーツ姿で、少し斜めに角度を付け、難しそうな顔をした」という見え具合の写真は「私、偉いです。社内でも威張っています」という印象が強いです。この写真だけで企業価値が下がるといっても過言ではないでしょう。

これを「印象操作」と侮ることなかれ。株主から見て、夢を託そうと思える社長であるかどうか。部下から見て、一緒に仕事をしたいと思える上司であるかどうか。これは孫子のいう「将=将帥の能力・器量」の大切な要素です。将が優れていないと戦いには勝てません。ビジネスにおいては企業価値を上げることができなくなってしまいます。

ソフトバンクの孫社長は未来への夢を語りつつ、「人生が楽しくてしょうがない、おもしろくてしょうがない」という言葉によって株主の心をつかみました。私の友人AなどはAKB48のコンサートに行ったような笑顔で株主総会について語っていましたから。

企業価値を高めるべく、未来への夢を語る。それがホラでないことを日々の努力によって証明しつつ、株主からの支持と応援を引き出す。そんな「道・天・地・将・法プラス頂」の「孫の二乗の法則」、これからも期待してみたくなります。

それとともに、部下や我が子に向けて「人生が楽しくてしょうがない」、そう言える大人でありたいものです。頑張りましょう、ご同輩!

「孫子の『商法』」は火曜更新です。次回は2017年7月11日の予定です。

田中靖浩
田中公認会計士事務所所長。1963年三重県出身。早稲田大学商学部卒。「笑いの取れる会計士」としてセミナー講師や執筆を行う一方、落語家・講談師とのコラボイベントも手がける。著書に「良い値決め 悪い値決め」「米軍式 人を動かすマネジメント」など

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