わざと新人研修に遅刻 「ふれ合い恐怖」の危うさ
新入社員研修では初対面の先輩との出会いが待ち構えている PIXTA
東京・日本橋の中堅老舗企業に勤務する42歳の田中氏は所属部署での新入社員研修を初めて任されビックリした。新入社員向けのオリエンテーションで、彼は出社初日のスケジュールをこんなふうに伝えた。
「うちの部署は午前9時から始まります。新人研修は9時半にスタートします。一緒に頑張りましょう!」
梶原「そういう言い方だと、研修を受ける新人の中には9時半出社でいいと受け止める人もいるんじゃない?」
田中「そういうひねくれた若者はいないと思っていたんですが、1人だけいました。9時半ジャストに来た女性が」
梶原「私みたいなの、いるんだねえ」
田中「言い方にあいまいさもあったから、そういうことかなあという反省もあって、研修の後、彼女に直接聞いてみたら意外な答えでした」
梶原「?」
田中「彼女はとても賢い人で、私のつたない告知も文脈をしっかりくみ取って『新入社員も9時には出社したほうがいいのだろう』とは理解していたそうです。とはいえ、研修受講まで30分もあり、一体どうやってつないでいいのかものすごく不安だったんだそうです」
梶原「黙って座っていれば、上司や先輩がなんやかんやと話しかけてくれるんじゃないかなあ」
田中「そういう、『何を聞かれるのか?』『それにどう返したらいいのか?』を想像し、思わぬ質問につまらない返答をして失望させ、何だコイツ、つまらないヤツだと思われるのはつらい。そういう30分間を過ごすことを考えたら、告知の読み間違え(解釈間違い)で遅刻しましたと言ったほうがずっと気が楽だと感じたんだそうです」