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「いいビル」考え続ける毎日 丸の内担う三菱ウーマン

2017/5/24

山元夕梨恵 三菱地所丸の内開発部主事

東京の玄関口である丸の内や大手町の街づくりで大きな役割を担う、三菱地所。2017年春に開業を迎えたのは、多様な働き方の実現を掲げた「大手町パークビルディング」。このビルを手がけた女性プロジェクトマネージャーが抱く、仕事への熱い思いを聞いた。

■「場所」の工夫で多様な働き方を演出

三菱地所は2002年の「丸ビル」開業を皮切りに、丸の内・大手町・有楽町地区の街づくりを進めてきました。東京駅前の開発を進めた「第1ステージ」を経て、現在は大手町・有楽町エリアを含めた街の拡がりと深まりを求める「第2ステージ」が進行中。そんな中、17年春に開業を迎えたのが「大手町パークビルディング」です。

このビルのテーマは「多様な働き方の実現」。大規模オフィスだけでなくサービス機能付きの小規模オフィスも整備し、幅広いオフィスバリエーションを用意しました。2階にはオフィスサポートフロアを展開し、ビルで働く人が利用できる専用の「パークラウンジ」も完備。このほか、大手町で初めての住機能となるサービスアパートメントが入っていることも大きな特長です。

働き方改革が進む昨今、多様な働き方について考えていくと、働き方の工夫は必ずしも「時間」だけではなく、「場所」という側面もあります。在宅勤務やオフィス以外で仕事をするリモートワークも増えています。これからは「ワークプレースの選択」がさらに広がっていくでしょう。そうした中で、オフィスとはどういう存在であるべきか。私たちはオフィスをコストと考えず、ビジネスの価値を生み出すプロフィットセンター(収益部門)となるべきだと考えています。

例えば、普段はバラバラで動いているチームメンバーが顔を合わせてアイデアを持ち寄る。ここに来るからこそ効率よく働ける。新しい発想が生まれる。オフィスは新しい価値を生むための場所になる。そんなオフィス像を思い描きながら造り上げたのが「大手町パークビル」であり、そのあり方のひとつが2階のオフィスサポートフロアです。

■オフィスビルの「仮眠室」。どう機能するかが楽しみ

オフィスサポートフロアの中心となる「パークラウンジ」には、ラグジュアリーなゾーンとカジュアルなゾーンの2つの異なる空間を創出。広いソファー席ではミーティングや商談もできますし、電源のあるひとり席では集中して作業することができます。コーヒー片手に腰掛けたくなるベンチ席などもあり、働く人たちに気分で選んでいただける多彩な選択肢を提供します。

また、フィットネスルームやシャワー室、仮眠室も設けました。日本のオフィスワーカーに堂々と仮眠をとる文化はあまりありませんが、知的生産性向上のためにはオフィスビルにもこうした機能があってもいいと考えています。日本のオフィスビルで仮眠室がどのように機能していくか、私たちも注目しているところです。このほか、保育所やサラダ専門店なども入る予定です。

オフィスビル賃貸という視点で考えれば、ビルの貸し床のうち500坪にも及ぶフロアを貸さずに、就業者専用の共用スペースに充てることはもったいないようにも思えますが、ここから新しいオフィスの在り方や多様な働き方をアグレッシブに発信していければよいと思っています。

■悩んだときは基本に立ち戻って考える

「大手町パークビル」の計画が始まったのは約10年前のこと。私は2年前からプロジェクトに参加しました。このビルは新しいチャレンジも多く、社内外の関係者それぞれに思い入れの強い物件で、これを引き継いでまとめていくにはとてもパワーが要りました。

とりわけ骨を折ったのが、上層階にサービスアパートメントが入ることによる様々な調整ごと。サービスアパートメントとは、ホテルのようなサービスとマンションの居住性を併せ持つ宿泊施設です。サービスアパート事業者様との交渉をはじめ、オフィスワーカーとアパートメント利用者の動線や活動時間帯の違いといった複合ビルならではの難しさもあり、物理的に困難な問題なども噴出しました。

悩んだときには「そもそも、何が大切なのか?」に立ち戻るようにしていました。枝葉ではなく幹を見直すのです。私たちには、丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町地区)一帯の街づくりの中で、「大手町をグローバルビジネス拠点に」という思いがあります。日本最初のオフィス街として誕生したこの地域で、東京の国際的なプレゼンス(存在)を出していくために必要なビルを造っている、東京を代表するオフィスのど真ん中に住機能を造ることに意味があるのだ。そんな事業の根幹を見つめながら、プライドを持ってビルの完成まで駆け抜けました。

17年度中には三菱地所の本社も「大手町パークビル」に引っ越すことが決まりました。まさか自分の造ったビルで働くことになるとは思いませんでした(笑)。

■「10年3部署」が通例の中、まさかの経理から経理

私は現在、入社12年目です。最初に配属されたのは経理部でした。「街づくりがしたいです! 雑巾がけでもなんでもやります!」と言って入社したものの、算数も苦手でしたし経理部配属は正直、想定外でした。でも、ありがたいことに手厚い教育を受け、知識があれば若くても認めてもらえる環境もあり、やってみれば面白い仕事で、充実した毎日を送りました。

三菱地所の人事は「10年3部署」と言われていて、「そろそろかな……。次はどこだろう……」と思っていた5年目。ビルマネジメントの関連会社への出向の辞令が下りました。現場に出られるのかと思いきや、そこでなんと、また経理に配属されたのです。さすがに落ち込みました。カラオケ屋さんで大暴れしたことを覚えていますし(笑)、励ましてくれた多くの同僚や先輩たちの優しさは忘れられません。今思えば、2度目の経理時代があってよかったです。本社の経理では何百億、何千億の世界でしたが、ビルマネジメントの現場の経理は1円単位。実際のお金の流れを肌で感じることができ勉強になりました。

その後、出向先で営業部署に異動し、20代後半からチームリーダーとしてビルマネジメントの現場で仕事をしました。ビルは建ってからの時間のほうが圧倒的に長いもの。ビルで何が起こるのか、ビルが生き続けるためにはどんな支えが必要なのかを学びながら働く日々は、一見地味ですがとてもエキサイティングでした。

■「いいビルにしよう」というシンプルな熱い思い

ビルの建設や管理にはとても多くの人が関わります。チームリーダーやプロジェクトマネージャーとして仕事をするようになり、私の中に常に意識するひとつのリーダー像があります。それは、かつての上司です。どうしてその人の元では仕事がしやすかったのだろう?と近頃よく考えます。

その上司は自分の思いやビジョンを言葉にして示す人で、あるとき、「いいビルにしよう!」と言ったのです。シンプルですが胸に響く言葉でした。そして、「いいビルとは何かを考えるのがあなたの仕事だ」と。それ以来、私はビルで働く人、食事を楽しむ人、掃除をする人、オーナーさん、あらゆる関係者にとって、いいビルとは何か、100年先でもいいビルとは何かをとことん考えるようになりました。

もうひとつ、「まず身近な人を大切にしなさい。あなたたちのことは私が大切にするから」という言葉もよく思い出します。青臭い言葉かもしれませんが、こうした熱い思いが人を動かします。やる気にさせます。ちょっと気恥ずかしいような熱い言葉を、普通に口にできてしまう雰囲気があるこの会社が私は好きです。

私の仕事のモチベーションは間違いなく、人の熱い思いに触れること。人と話すことが大好きです。「大手町パークビル」の竣工引渡しの日に、建設会社の担当者さんから、「昨日まで毎日ここで過ごして一生懸命に手をかけてきた。この鍵を山元さんに渡したら自分の手を離れてしまう。娘を嫁に出すような気持ちだよ」と言われたときには、胸に込み上げるものがありました。たくさんの人の熱い思いと技術を結集したビルの完成は感動的です。こうして情熱をもってビルを造り、街づくりができることを幸せに思っています。

■取材後記

山元さんは現在、次なる開発事業の準備中。熱い思いで走り出す前にはたくさんの勉強やリサーチ、熟考、検討が不可欠だと言います。「今は仕込みの段階でインプットのまっただ中。何をしていてもその開発のことで頭がいっぱいです」。そんな彼女の趣味はバンド活動。「ライブハウスでライブもやっています! 私はボーカルです」というからビックリ。意外な一面に驚きました。取材の最後に手渡されたアロマスティックは、この地に昔から生えていたクスノキを切ったものだそう。大手町で育った樹のかけらからは、やさしい香りがしました。

山元夕梨恵
三菱地所丸の内開発部主事。「大手町パークビルディング」プロジェクトマネージャー。2006年、三菱地所へ入社。経理部を経て、三菱地所プロパティマネジメントへ出向。経理、営業職の後、15年から現職。

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