若者にも入りやすく 確定拠出年金、米国の設計に学ぶ
気になる確定拠出年金(3)
日本では20歳になったら、日本に住まいがあれば国民年金の被保険者になりますが、それとは別に資産形成のために確定拠出年金(DC)への加入を検討してみてもいいかもしれません。企業にまだ勤めていない学生でも、個人で始められる個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)であれば月額で最低5000円から積み立てができます。最近の制度変更を受け、転職する場合でもそれまで運用してきたiDeCoの「持ち運び」がより容易にできるようになったことも利点です。
公的年金を補完する仕組みとして日本でDCが登場したのは2001年10月。DCを通じて投資信託などにマネーが流れ込むことが見込まれ、日本でも「貯蓄から投資へ」の流れが勢いづくと期待されていました。それから15年以上たったいま、家計における金融資産の構成を日米で比べると、株式や投資信託といったリスク性資産の保有比率は日本が15%前後であるのに対して、米国は50%近く。日本では、依然として家計が保有する現預金の割合が5割強と高い水準にあります。
しかし、専門家によると米国も「1970年代までは、決して株式や投資信託での運用に積極的ではなかった」といいます。その流れを大きく変えたのが、米国で「401k」と呼ぶDCが80年代前半に登場したこと。米国の株価上昇ともあいまって、401kでの運用商品として株式のウエートを上げる積極的な運用で個人資産を増やした「成功体験」がさらなる株高に結びつく好循環を生み出したといえます。
米国の401kは制度設計も巧みだったといいます。何か選択肢が与えられたときには、あらかじめ定められたものを人は選びやすい――いま注目される「行動経済学」でいうところの「デフォルトオプション」という人間の行動原理を意識して設計したことが、個人資産のDCへの流入を促したといいます。
そのからくりについて、大阪大学の安田洋祐准教授に解説してもらいました。
気になる世界経済、日本の景気の行方はどうなる? 経済を動かすカギとは? 日経CNBCコメンテーターの崔真淑が取材する番組「SAIが行く!~ウーマンエコノミストの気になる今!~」のリポートをお届けします。毎週木曜日掲載。
マクロエコノミスト。日経CNBCコメンテーター。GOOD NEWS AND COMPANIES代表。1983年生まれ。神戸大学経済学部、一橋大学大学院(ICS)卒業。大和証券SMBC金融証券研究所を経て、2012年に独立。経済学を軸にニュース・資本市場解説を行う。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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