ライフコラム

臼井流最高の話し方

「大変ね」「頑張って」は禁句 相手がムッとする理由

2017/5/10

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 ほめることに10のパワーを注ぎ込むとしたら、なぐさめることには20の気配りをするのが、できる人の物言いです。「なぐさめの言葉」にはその人の教養や品性などが如実に表れます。

 スマートに人をなぐさめられるような気配りは、仕事や人間関係にも有益です。「なぐさめの言葉」には人間性が出るのです。

 落ち込んでいる相手やトラブルに見舞われた人を前にして「大変な目にあいましたね」「大変ですね」と言う人は多いものです。確かに「大変な経験」をした、あるいはその渦中にあるのですから、「大変」という言葉を使うこと自体は間違いとはいえません。

 しかし、立場を変えて考えてみましょう。もしあなたが「大変な目にあいましたね」や「大変ですね」と、言われたらどう感じるでしょうか? なぐさめてくれているのは分かるけれど、しょせんは人ごとと感じ、「社交辞令」のような感覚を抱く人もいるでしょう。極端にいえば「口先だけのなぐさめだ」と受け取る人もいると思います。

 私自身、亡き夫の借金返済に奔走していたときに、事情をあまり知らない人から「いやぁ~臼井さん、大変な目にあいましたね」と、含み笑いをしながら言われたことがありました。私が黙っていると、「はずれくじを引いただけですよ、頑張ってください」。励ましの言葉のつもりで言ったのでしょうが、私は不安や戸惑いだらけで、落ち込みの極致でしたから、ナイフで心をえぐりとられるような痛みしか覚えなかったのです。「他人の不幸は蜜の味というけれど、こういうことなのかな?」とも思いました。

 悪気がないのは分かりますが、落ち込んでいる相手をなぐさめたいときには、細心の注意を払いましょう。簡単に「大変ですね」「大丈夫ですよ」で、片付けてはいけないと思うのです。

■「元気を出して」「頑張って」は禁句

 適切な言葉が見つからないならば、黙って寄り添い、相手の話を聞いてあげるのがいいでしょう。相手が同性ならば、背中をさすったり優しく手を握ったりするほうがいいとさえ思います。

 なぐさめや励ましの言葉で傷ついてから、私は「大変ですね」を全く使わなくなりました。落ち込んでいる相手をなぐさめるときには「お気持ち、お察しします」「心からお察しします」と伝えています。

 「察する」とは、相手を思いやることです。さらに「私でできることがあれば、遠慮なくおっしゃってくださいね」と添えています。「私でできることがあれば~」は、相手の気持ちに寄り添ってあげることです。さりげない言葉ですが、このひと言で相手はどれだけ救われるかしれません。

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 不幸な出来事に見舞われた人に言ってはいけない言葉があります。悪気はなく他意もなく、不幸な出来事に見舞われた人をなぐさめようと、多くの人が口にするのが「元気を出してください」「頑張ってください」でしょうか。でも、これらは好ましくありません。

 大きなトラブルに襲われたり、事故・事件に巻き込まれたりした人は「元気を出してください」「頑張ってください」と言われても、そうそう元気になれるものではありません。本人なりに十分頑張っている場合は「これ以上頑張れってどういうつもりなの?」という気持ちにもなります。励ましたい気持ちは分かりますが、「元気を出して・頑張って」に拒否反応を示す人は本当に多いのです。

 落ち込んでいる場合、人は普段は気にしないような他愛のない言葉でも敏感に反応するものです。「元気を出して・頑張って」はその代表格と言えるでしょう。不幸な出来事へのなぐさめならば「突然の出来事、お気持ちをお察しします」と伝えるか、あえてそのことには触れずに「少しは落ち着かれましたか?」と尋ねるだけでも、あなたの思いは届きます。

■なぐさめたつもりが「プレッシャー」に

 仕事のミスが続き、落ち込んでいる部下や後輩がいたらあなたはどんな言葉を掛けますか? 「暗い顔するなんてお前らしくないぞ」「たいしたことじゃないよ」と発破をかける人もいるでしょう。あるいは「いつまで腐っているんだよ」「仕事は待っていてくれないぞ」と、やる気を引き出そうと語気を強める人もいるでしょう。

 伝え方一つで、良くも悪くも作用するのが言葉ですから、これらで立ち直るケースもあり得ます。しかし、ミスで落ち込み、自信をなくしている部下や後輩に先のような言葉は響きにくいのが現実です。「次に頑張ればいいよ」と言う人もいますが、これはなぐさめではなく「プレッシャー」になりかねません。

 ですから「私も新人のときはよく失敗したよ」「私が●●さんと同じ年齢のころは失敗ばかりだった」という感じで自分の経験を話すといいでしょう。そのほうが相手の気持ちは楽になります。そして「あまり気にしないで。私でよければいつでも相談に乗るよ」「あんまり心配するな。私でよければいつでも話を聞くから」というように、相手が必要以上に自分を追い込まないための「助け舟」を用意してあげるといいでしょう。

 こんななぐさめや励ましが言えるならば、上司、先輩として尊敬されることは間違いありません。次回は、感情に流されない「怒り方」です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は5月17日の予定です。

臼井由妃
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(php文庫) 公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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