ギョウザをただで食べるには? 貧乏学生の行動論理
ギョウザ(5)
死のロードに出ることになった。彦根から金沢、金沢から能登というスケジュールである。
彦根では、ある麺を激しく食べる予定を立てている。長崎発祥の麺と同じ名前なのにほとんどどこも似ていない物件である。新聞に書くので文章は極めて冷静なはずである。冷静でありたいと思う。たぶん冷静でいられるだろうと思う。いや、冷静さを失ったらどうしようかとも思う。
先方からは「長崎のあれとは違いますからね」
とクギを刺されている。が、私はそのクギを強引に引っこ抜いて、怒りの「鉄建公団」になったりはしないだろうか。自分でもとっても心配。
金沢では支局勤務時代に無意識に食べていたハントンライスを意識も高く、はっきりくっきり食べてみようと考えている。あの町は1年中おでんを食べるところなので、飲むならおでん屋が無難。牛スジで一杯やりますか。
JR金沢駅の地下に白山の酒「菊姫」の直営店があるはずである。あそこはおでんも刺身も大皿料理もあり、どれも安くてうまい。いまの時期は金沢沖で捕れるイカがいい。
金沢は豆腐がおいしいところなのだが、このことはあまり知られていないかもしれない。冷ややっこでキューっなんてたまりませんね。
この際であるから、はっきりさせておかなければならない。彦根の物件以外の飲み食いは自腹である。
デスク乱入 僕はいつでも自腹です。
ギョウザである。そのギョウザをただで食べる方法。
配っている封筒の中には月ごとの券と店ごとの券があって、うまく使えば「8月券と北白川店券」という感じに2人前のギョウザをタダで食べることができます。貧乏学生は箱代20円を払って2人前を持ち帰りし、アパートでご飯だけ炊いてギョウザ定食にするという技を使っていました。
バイクなんかの足を持ったら、結構遠くのお店までギョウザタダ券使いに出かけましたが、住宅街のお店(例えば山科店とか)だと、近所のおばさんが「ギョウザ10人前持ち帰り」(もちろんタダ券ではない)なんていう注文をしているので、こっちの人はこういう風にギョウザを食べるんだ、とびっくりした覚えがあります(ちどりのおっとさん)
わかりますねえ、貧乏学生の行動論理。
私もかつて天下無敵の貧乏学生であった。寮にいたのだが、日曜は誰かが持っている釜飯弁当の陶器の釜を持ち出してきて白米に塩、醤油を加えて素釜飯を炊いていた。無論具はない。庭に生えている草の中で柔らかそうなのをむしって入れるのが贅沢というものであって、あれはあれでうまかったような気がする。
サバの缶詰などは立派なごちそうであった。箸で食べるとすぐなくなるので、爪楊枝で食べた。でもやはり直ぐになくなった。
以来、今日に至るまで「サバ缶はごちそう」概念は我が脳裏を去らず、いまでも家族に隠れて炊きたてのご飯にサバ缶をぶちまけて食べるときは涙を禁じ得ない。缶涙にむせぶのである。
デスク小槌を持って カ~ン。そのダジャレ、鐘ひとつね。ちなみに鳴らした鐘は「たま」の石川浩司が使っていたクッキーの空き缶です(うそ)。
野瀬 じゃあ、缶類にむせぶに変更。
イタリアンとギョウザの結託。
実際にはフレンドではイタリアンに負けず劣らずの人気メニュー。地元タウン誌では、人気ギョウザランキングの堂々3位になる実力派です。
イタリアンとセットになった「ペア」や、さらにドリンクが付いた「コンボ」などもメニューにあります。もちろんギョウザだけや、ギョウザ+ドリンクのメニューもあり、さらにはフレンド特製の冷凍ギョウザも販売しています。
ちなみにフレンドの場合、ギョウザと言えばニンニク抜きです。ニンニク入りは「ニンニクギョウザ」と丁寧なネーミングとなっています。
イタリアンをご存じない方にすれば、「イタリアン? ギョウザ?? 何それ???」でしょうが(あがきた@新潟さん)
新潟市の「みかづき」と並ぶ長岡市の「フレンド」。新潟イタリアンの両雄である。ソース焼きそばに各種パスタソースをかけたイタリアンは、うーん、どうしてそんなことをしなければいけないのかと思わせつつ、結構いけるものである。
そして、確かにフレンドにはギョウザがあった。あったとどこかに書いた。が、あのチェーン店においてギョウザがそこまで重要なアイテムであるということまでは気づかなかった。そうだったんですか。
なるほど、あがきたさんがおっしゃるようにファストフード店でギョウザが主役の一角を占めるケースは珍しいであろう。
長岡辺りに行ったらぜひフレンドを再訪しなければなるまい。アサツキのぷくりをポケットに入れて。
突き出しで、モヤシをゆでたものに辛子醤油をかけたものがでてきます。ギョウザは何人前単位で頼みますが、焼くフライパンが1人前用、2人前用、3人前用しかない(確か)ので、5人前とか頼むと3人前の餃子の上に2人前のギョウザを重ねた状態で出てきます。デコレーションケーキ状態です。…おばさんが小ぶりなホーローのやかんで直燗でつけてくれるお酒がなぜかギョウザに合うんですよ。(025のポストマンさん)
やかんでお燗かあ、いいなあ。学生時代の寮の宴会ではバケツにお湯を入れ、そこに一升瓶を突っ込んでお燗していた。
(特別編集委員 野瀬泰申)
[本稿は2000年11月から2010年3月まで掲載した「食べ物 新日本奇行」を基にしています]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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