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売れる営業 私の秘密

ベンツ販売のエース 最初の30分が勝負「迷わせない」 ヤナセ 飯塚智史さん

2016/12/19

■寸暇惜しみ顧客と対面

 独メルセデス・ベンツの販売で国内最大手を誇る輸入車販売店のヤナセ。新宿支店(新宿区)には、都内のヤナセでメルセデス販売トップに迫る営業マンがいる。入社10年目の「MB国際認定セールス」、飯塚智史氏(34)だ。

 「君は前の仕事の方が向いているんじゃない」。飯塚氏はヤナセに入社した頃、顧客に言われた言葉を鮮明に覚えている。車好きが高じて複写機大手から転職したものの、最初5カ月の売り上げはゼロだった。

 その飯塚氏は今、ヤナセが都内に持つメルセデスの販売店で140人中トップの販売実績(8月末時点)を上げるエースだ。通期での都内トップはまだ経験がないが、ヤナセが全国トップ3%の社員に送る優秀社員賞も2011年から5年連続で受賞している。

 飯塚氏の営業の特徴は接客時間にある。入店から1時間半以内に商談し、成約者を見送ることを目標にしている。

 営業マンの中には趣味や仕事の話から入り雰囲気を和ませる人もいるが、飯塚氏は「ムダな話はしない。迷う時間は与えたくない」とキッパリ。代わりにどんな車が欲しいのか、何がネックになっているのかを時間内に精いっぱい探る。「最初の30分が勝負」だ。

 この営業スタイルが意外にも家族連れに受ける。高い買い物とあって、販売店には家族連れで車を見にくる人も多い。財布を握る妻や最後の一声をあげる子どもが飽きてしまう前に、車の魅力をとことんアピールするのだ。

 こんなことがあった。国産セダンから乗り換えようとする家族連れに、「せっかくなので最近発売した『Eクラス』はどうか」と薦めてみた。ゴルフが趣味という夫の目が泳ぐ。妻に気を使った瞬間を見逃さなかった。「ゴルフに行くなら1回り小さい『Cクラス』で十分」「奥さん、助手席に乗ってみて下さい」と畳みかけた。

 接客を始めて30分もすれば、家族の中で購入の主導権を握る「キーマン」が見えてくる。キーマンが気に入った車の長所をくまなく説明するのはもちろん、キーマンでない方も気遣う。妥協案を探すのも大切な仕事。業務の空き時間にカタログを読み込み、車体色やオプション装備といった提案の引き出しを増やす。

 もう1つ、飯塚氏の強みはストイックな姿勢だ。「手帳は真っ黒に、スランプを作らない」をモットーに日々積み重ねを怠らない。少しでも空きがあれば予定にないテレアポなどをするようにしている。

 1日の仕事が終わって元気があればもう一件、顧客の家へポスティングに行く。「たった1件だが、1年やれば約200件。次の年につながる大きな種まきだ」と強調する。

 売れない営業マンだった時代から、とにかく地道に動いた。前職で営業をしていたこともあって、飛び込み営業はお手のもの。来店を検討している人から電話をもらい、1時間以上店の前で待ち構えていたこともあった。

 予定はぎっしりと詰めるが「あっぷあっぷの一歩手前がコツ」だそう。車検時など、顧客の急な来店を逃さないためだ。

 車を売った後は顧客との接点が減る。車検もサービス担当が応じることが多い。しかし飯塚氏は「今から車検に行く、と電話がきたら予定をずらしてでも、できるだけ出迎える。車検はお客様と自然に車の話ができる絶好のチャンス」と語る。新型車の金融商品なども説明、買い替え時に客に選んでもらえる営業マンを目指す。

 メルセデスは15年、16年ぶりに独フォルクスワーゲン(VW)を抜き輸入車1位になった。販売台数は6年連続で増加、飯塚氏の販売実績も9年連続でプラスだ。「ここまで来たら(東京で)1位を取りたい」と意欲をみせる。

(吉田楓)

 いいづか・さとし 大学卒業後、複写機大手の営業を経て、2007年にヤナセ入社。ヤナセ新宿支店で独メルセデス・ベンツの販売を担当する。34歳。

[日経産業新聞2016年9月15日付]

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