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売れる営業 私の秘密

「食事して」訪日客誘致15年 泥臭く信頼勝ち取る ワンダーテーブル 関川謙二さん

2016/11/28

■旅行代理店など200社、足で開拓

 ワンダーテーブル(東京・新宿)が運営する、しゃぶしゃぶ店「鍋ぞう」などの店には多くの訪日外国人(インバウンド)が訪ねてくる。営業第1部のアシスタントマネジャー関川謙二氏(52)は「インバウンド」という言葉がもてはやされるはるか前から外国人の誘致に尽力してきた。泥臭く足を運ぶ営業方法で、旅行代理店など200社を開拓。年間30万人近くのインバウンドを取り込む同社の下地を作った。

 関川さんがインバウンドの誘致に力を入れ始めたのは約15年前。当時、店を訪れる外国人の数は年間で1万人に満たなかった。1日当たりわずか30人弱。だが、関川さんはそこに目をつけた。「営業をすればもっと来てくれるのではないか」

 とはいえ、インバウンドに直接営業をかける方法はない。一度自分の店を使ってくれた旅行代理店などへの挨拶まわりと、旅行会社の新規開拓に明け暮れた。

 国内の旅行代理店などに直接足を運ぶ毎日。年間でおよそ100社。大手はもちろん名の知られていない会社にも愚直に営業をかけた。海外の旅行会社にはファクスを送る。その数200社。それだけアプローチしても実を結ぶのは「1割あれば良い方」だった。

 当時はまだインバウンド対応についての経験も知識も乏しく、営業方法はひたすら「うちで食事をしてください」と頼み込むだけ。だが関川さんの営業の真骨頂は店での対応にあった。

 旅行代理店が食事の場所を決定する昔とは違い、現在はインバウンドの団体を引率するガイドが個人的に旅行中の食事場所を決めることが多い。そこで関川さんはガイドとの信頼関係づくりに動いた。

 団体を率いて食事に訪れたガイドに、ねぎらいの言葉をかけるのは当たり前。ガイドの愚痴を聞いたり、ガイドの代わりに客に頭を下げてもめ事を解決したりしてガイドの負担を減らすことに注力した。「結局は人対人の付き合い。泥臭く信頼関係を作るのが大切だ」と関川さんは語る。

 一度できた信頼関係は簡単には壊れない。現在、営業先としてリストにある、国内外400社の旅行代理店のうち半分は関川さんが営業を始めた15年前から関係が続く。

 もっとも今では、団体ツアーではなく、個人客の利用が増えてきた。ガイドブックやホームページで発信するが、関川さんは「今は口コミの広がりが大切になってきた」と感じている。

 口コミで威力を発揮するのは現場でのきめ細かい対応だ。関川さんはしゃぶしゃぶ店「モーモーパラダイス歌舞伎町牧場」の支配人も務める。海外の人が自分好みに味を変えられるように塩やしょうゆ、コショウなどの調味料をテーブルに備え、箸の代わりにスプーンやフォークを用意する。メニューや店内の案内なども外国語に対応している。

 それでも想定外のことが起こる。予約時には牛肉を食べると言っていたのに、直前で豚肉しか食べられないと言われたり、店に来てからベジタリアンだと言われたり。牛肉が食べられないことが分かると豚肉のコースに変更したほか、ベジタリアンの人には野菜とうどん、豆腐などを提供することで満足してもらった。

 こうした努力の積み重ねで、インスタグラムやフェイスブックなどの交流サイト(SNS)で来店者が店のことを発信する例が増えた。SNSで取り上げられるたびに「ご来店ありがとうございました」とコメントを付けることも忘れない。

 国内で約60店運営するワンダーテーブルの15年のインバウンド客数は27万5千人で前年比5%増だった。これを20年までに36万人まで増やす方針だ。インバウンドが少なかった15年前も、インバウンドが町にあふれかえる今も、関川さんがやることは変わらない。ただひたすらに目の前の顧客を大事にして泥臭く信頼を勝ち取っていく。(毛芝雄己)

 せきかわ・けんじ 1986年富士汽船(現ワンダーテーブル)入社。15年前からインバウンドの取り込みに従事する。経理などを経て、13年からはモーモーパラダイス歌舞伎町牧場で支配人も務める。

[日経産業新聞2016年6月16日付]

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