ご飯をおいしく食べる秘訣とは 日本で世界で各地各様
「ちゃんとご飯食べてる?」
「一度、メシでも行きましょう」
我々はしばしばこんな言い方をする。
この場合の「メシ」や「ご飯」は、米そのものではなく、食事をするという意味。食の多様化が進み、朝はパン、昼はラーメン、夜はイタリアンでパスタという日も珍しくないが、そんな場合でも私たちは「朝ご飯はパンだった」「晩飯はパスタがいい」などという表現をしてしまう。
ひとつの素材が食事全体を表すことばになるほど「米」は日本人にとってなくてはならないものだ。今年の米の豊作を祈っては神事を行い、無事に稲刈りが済んだと言っては祭りをする。神様への供物も米、もち、酒の米づくし。
炊いて食べるだけでなく、油をとり、酢や味噌を作り、せんべいや和菓子などへ加工もする。米粒をとった後の稲ワラは正月のしめ飾りに。ぬかはぬか漬けに。納豆だって、ワラに付着する納豆菌がなければ生まれなかったのだ。
とはいえ、米は日本だけのものではない。実は日本で作られ好まれているジャポニカ米は、世界では少数派。生産量も、消費量も、インディカ米の方が圧倒的に多い。アジアで、ヨーロッパで、アメリカで、それぞれの気候や嗜好に合わせ、さまざまな品種と料理が生まれていった。
欧州一の米どころであるイタリアで目立つのは、大粒のジャバニカ米だ。ブロートをたっぷり吸いながらもベタベタと粘らないのが特徴で、リゾットをおかゆではなくちゃんとリゾットにしてくれる。
インドやパキスタンで作られるバスマティライスは、その香りの良さから「クイーン・オブ・ライス」とも呼ばれ、調理後2センチもの長さになる長い米。ふんわりパラパラの軽い食感が心地よく、つい食べすぎてしまう。
ジャスミンライスなどのインディカ米が多く生産されるタイでは、一方でもち米も大変好まれる。右手で丸め、汁気のある料理につけて食べれば、気分はイサーン人だ。
日本よりずっと米食いの国であるネパールは、塩気のきいたおかずでモリモリとご飯を食べるのが特徴。また間食や祭りのときなどによく食べられるのが、チウラと呼ばれるクリスピーな干し飯。常温保存がきき、そのまますぐ食べられるため、我が家でも常備品である。
米農家の友人は「米はローカル食に限る」と断言する。米は収穫された地域の食材と相性がいい。さらにその地域のやり方で調理するとなおよし。米をおいしく食べるには、その米がどこで生まれたのかを知るのがいちばんの近道なのだという。
さあ、ニッポンは新米が出揃った。
どこの米を、どうやって食べようか。
(食ライター じろまるいずみ)
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